「そろそろ遺言書を、と考えるけど、公証役場での作成費用って一体いくらかかるの?」「遺言書の作成を専門家に依頼すると高そう…」など、費用のことで一歩踏み出せずにいませんか。

特に、公正証書遺言を作成する場合、自分で手続きするのと司法書士や行政書士に頼むのとで、どれくらい料金が変わるのか気になりますよね。

結論から言うと、公証役場での遺言書作成費用は、遺言で渡す財産の価額に応じて決まる手数料が基本で、数万円からが目安となります。ただし、証人を誰に頼むか、専門家にサポートを依頼するか、また財産の内容によって総額は大きく変わるため、事前に仕組みを理解しておくことが大切です。

この記事では、公正証書遺言の費用について、公証人手数料の早見表を使った具体的な計算方法から、自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の費用の違い、さらには後でもめないための注意点まで、専門家の視点から分かりやすく解説していきますね。

この記事のポイント

  • 公証役場でかかる費用の具体的な内訳と計算方法
  • 自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の費用の違い
  • 遺言書作成に必要な書類と準備の流れ
  • 費用を抑えつつ後々トラブルにならないための注意点

専門家やえさん

こんにちは、やえです!終活の一環として遺言書づくりを考えるとき、なんだか大事(おおごと)で費用も高そう…って思われがちですよね。

でも、ご安心ください!仕組みさえ分かれば、ご自身の状況に合った最適な方法が見つかります。大切なご家族への最後のメッセージを形にするお手伝いができるよう、費用面での不安をスッキリ解消していきますので、一緒に見ていきましょう!

遺言書作成費用!公証役場でかかる費用の内訳

遺言書作成費用!公証役場でかかる費用の内訳

公証役場で遺言状を作る費用はいくらですか

「ズバリ、公証役場で遺言状を作るといくらかかるの?」という誰もが最初に抱く疑問にお答えしますね。専門家に依頼せず、ご自身で全ての書類準備や公証人とのやり取りを行った場合、公証役場に直接支払う費用は、相続させる財産の総額にもよりますが、おおむね5万円から15万円程度が一般的な相場と考えてよいでしょう。

この費用の大部分を占めるのが、法律(政令)で明確に定められた「公証人手数料」です。これは、遺言に記載する財産の価額(金額)に応じて段階的に設定されています。

これに加えて、遺言書の用紙代にあたる手数料や、証人を公証役場で手配してもらう場合の日当、ご病気などで公証人に出張してもらうための追加費用などがかかります。

遺言書は、残されたご家族への最後のラブレターのようなもの。費用はもちろん大切ですが、それ以上に、ご自身の想いが正確に、かつ法的に有効な形で反映されているかが最も重要です。まずは費用の全体像と仕組みをしっかりと理解して、安心して作成準備を進めていきましょう。

公正証書遺言の費用は公証役場で決まる

公正証書遺言の費用は公証役場で決まる

公正証書遺言を作成する際の基本的な費用は、個々の公証役場が自由に料金を設定しているわけではありません。その根拠となるのは「公証人手数料令」という国の政令であり、これによって全国一律の基準が厳格に定められています。

つまり、北海道の公証役場で作っても、沖縄の公証役場で作っても、全く同じ内容の遺言であれば、基本手数料は同額になるということです。この点は非常に公平で分かりやすい仕組みになっています。

この手数料を計算する上での基本的な要素は、以下の2点に集約されます。

  1. 相続または遺贈する財産の価額:不動産はいくらか、預貯金はいくらか、といった財産の金額がベースになります。
  2. 財産を受け取る人の数:「妻に〇〇円」「長男に〇〇円」というように、財産を渡す相手の人数も計算に関係してきます。

具体的には、まず財産を受け取る一人ひとりについて、その人が受け取る財産の価額を算出し、それに対応する手数料を計算します。そして、それらの手数料を全員分合算したものが、遺言書全体の基本手数料となるのです。

少し複雑に感じるかもしれませんが、次の項目でご紹介する早見表を使えば、ご自身のケースがどのあたりに該当するのか、ぐっとイメージしやすくなりますよ。

公証人手数料の早見表で確認

公正証書遺言の費用を計算する際の基礎となる、公証人手数料令で定められた財産価額ごとの基本手数料は以下の通りです。

まずは、財産を渡したい相手一人ひとりが受け取る金額が、この表のどこに該当するかを確認することから始めましょう。

目的の価額(相続させる財産の価額)手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算
3億円を超え10億円以下9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算
10億円を超える場合24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算

(参照:日本公証人連合会「遺言」)

例えば、ご長男に800万円の預貯金を相続させる、という内容であれば、上記表の「500万円を超え1,000万円以下」の区分に該当するため、ご長男に対する手数料は17,000円となります。

このように、まずは財産を渡す相手ごとに手数料を算出していくのが計算の第一歩です。遺言書全体の費用は、これを全員分足し合わせ、さらに追加の手数料を加味して計算します。

公正証書遺言の費用計算シミュレーション

公正証書遺言の費用計算シミュレーション

それでは、具体的な家族構成と財産を例に挙げて、実際に公証役場に支払う手数料がいくらになるのかを計算してみましょう。先ほどの早見表と見比べながら、手順を追って確認してみてください。

【計算例】財産総額8,000万円を家族3人に相続させる場合

  • 遺言者:
  • 相続人妻、長男、長女
  • 財産総額:8,000万円
  • 遺言の内容:
    • 妻に自宅不動産と預貯金で合計4,000万円を相続させる
    • 長男に預貯金2,000万円を相続させる
    • 長女に有価証券2,000万円を相続させる

ステップ1:受取人ごとの基本手数料を算出

まず、財産を受け取る人ごとに、早見表を使って手数料を算出します。

  • 妻(4,000万円分):「3,000万円を超え5,000万円以下」に該当 → 29,000円
  • 長男(2,000万円分):「1,000万円を超え3,000万円以下」に該当 → 23,000円
  • 長女(2,000万円分):「1,000万円を超え3,000万円以下」に該当 → 23,000円

ステップ2:算出した手数料を合算
次に、ステップ1で算出した全員分の手数料を合計します。
29,000円(妻)+ 23,000円(長男)+ 23,000円(長女)= 75,000円

ステップ3:「遺言加算」を追加
遺言書に記載された財産の合計額が1億円以下の場合は、特別な加算として一律11,000円が追加されます。これを「遺言加算」と呼びます。
75,000円 + 11,000円 = 86,000円

ステップ4:その他の費用(正本・謄本代など)
最後に、上記の手数料に加えて、遺言書の正本・謄本の交付手数料(用紙代のようなもの。1枚250円で計算され、通常は数千円程度)などが加わります。したがって、このケースでの公証役場に支払う手数料の合計は、約9万円前後が一つの目安となります。

公証役場での遺言作成に必要な書類

公正証書遺言をスムーズに作成するためには、事前にいくつかの証明書類を準備し、公証役場に提出する必要があります。これらの書類は、遺言者ご本人の存在、相続人との関係、そして遺言に記載する財産の内容を公的に証明するために不可欠です。

不足があると手続きが進められなくなるため、しっかりと準備しましょう。一般的に必要となる主な書類は以下の通りです。

主な必要書類リスト

  1. 遺言者本人に関する書類
    • 印鑑登録証明書:お住まいの市区町村役場で取得します。通常、発行後3ヶ月以内のものを求められます。
    • 戸籍謄本:遺言者と相続人の関係を証明するために必要です。本籍地の市区町村役場で取得します。
    • 実印:作成当日に公証役場へ持参し、署名押印する際に使用します。
  2. 財産を受け取る人(相続人・受遺者)に関する書類
    • 遺言者との関係がわかる戸籍謄本(遺言者の戸籍謄本で関係がわかる場合は不要なこともあります)。
    • 相続人以外の第三者(友人やお世話になった方など)に財産を遺贈する場合は、その方の住民票(氏名と住所を正確に特定するため)。
  3. 相続財産を特定するための書類
    • 不動産(土地・建物):法務局で取得する「登記事項証明書(登記簿謄本)」と、市区町村役場で取得する「固定資産評価証明書」または毎年送られてくる「固定資産税・都市計画税納税通知書」。
    • 預貯金:金融機関名、支店名、口座種別、口座番号が正確にわかる通帳のコピーなど。
    • 有価証券(株式など):証券会社名、支店名、銘柄、数量がわかる取引残高報告書などのコピー。
  4. 証人に関する書類
    • 証人を自分で手配する場合、その方の氏名、住所、生年月日、職業を事前に公証人に伝える必要があります。メモ書きで構いません。

これらの書類は、ご自身の状況(財産の種類や相続人の構成)によって追加で必要になったり、一部が不要になったりすることがあります。必ず事前に作成を依頼する公証役場に問い合わせて、ご自身のケースで必要な書類一式を正確に確認しておくことが、手続きを円滑に進めるための重要なポイントですよ。

遺言書作成を自分で行う場合の費用は?

遺言書作成を自分で行う場合の費用は?

公正証書遺言とよく比較される方法として、「自筆証書遺言」があります。これは、その名の通り、遺言者が全文・日付・氏名をすべて自筆で書き、押印して作成する遺言書です。この方法の最大のメリットは、何といっても費用がほとんどかからない点にあります。専門家や公証人への手数料が一切不要で、基本的には紙とペン、印鑑さえあれば作成できるため、費用は実質0円と言えます。

ただし、近年スタートした便利な制度として「自筆証書遺言書保管制度」があります。これは、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらう制度で、利用する場合には申請時に1件あたり3,900円の手数料が必要です。

この制度を利用すれば、遺言書の紛失や盗難、改ざんといったリスクを未然に防ぐことができます。さらに、相続が開始した後に必要となる家庭裁判所での「検認」という手続きが不要になるという、非常に大きなメリットも享受できます。

自筆証書遺言の落とし穴

費用を抑えられる手軽さの裏側には、大きなリスクも潜んでいます。自筆証書遺言は、民法で厳格な形式が定められており、例えば日付の書き忘れ、押印の漏れ、パソコンでの作成など、形式上の不備が一つでもあると、遺言書全体が無効になってしまう可能性があります。

また、内容が不明確なために、かえって相続人間の争いの種を生んでしまうことも少なくありません。せっかく込めた想いが無駄にならないよう、作成には細心の注意が必要です。

専門家やえさん

費用の内訳、だんだん見えてきましたか?公証役場の費用は法律で決まっているので、基本は同じです。でも、「自分で全部やるか」「専門家に頼むか」で、総額や安心感が大きく変わってきます。

費用を抑えることも大切ですが、何より大事なのは「家族がもめない遺言」を残すこと。その視点で、次の比較も見ていきましょうね!

遺言書作成費用を公証役場以外と比較!注意点も解説

遺言書作成費用を公証役場以外と比較!注意点も解説

公正証書遺言の費用を自分で行う場合

「専門家の手を借りずに、自分で直接公証役場とやり取りして公正証書遺言を作成したい」という選択ももちろん可能です。この方法を採った場合にかかる費用は、これまでご説明してきた公証役場に支払う基本手数料や加算手数料、そして戸籍謄本などの書類取得にかかる実費のみとなります。

専門家への報酬が一切発生しないため、公正証書遺言を作成する方法としては、費用を最も安く抑えることができる選択肢です。

しかし、このコストメリットの裏側には、ご自身が負うべき負担やリスクも存在します。メリットとデメリットを天秤にかけて、慎重に判断することが大切です。

メリット

  • 専門家への依頼費用(一般的に10万円以上)がかからないため、トータルの費用を最小限に抑えることができる

デメリット・注意点

  • 本籍地や不動産の所在地がバラバラな場合など、戸籍謄本や不動産の評価証明書といった必要書類を全て自分で収集する手間と時間がかかる
  • 遺言の内容(文案)を自分自身で考え、整理しなければならない。公証人は法律的な形式の不備はチェックしてくれますが、遺言内容が原因で将来相続人間でトラブルになる可能性がないか、といったコンサルティングは行いません
  • 公証人との事前の打ち合わせ日の調整や、書類の提出、内容の修正といったやり取りも、すべて自分で行う必要があります。

費用を抑えられる点は大きな魅力ですが、それ相応の時間と手間、そして「本当にこの内容で家族は円満に相続できるだろうか」という点を自分自身で判断しなければならないという精神的な負担も考慮した上で、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

遺言書の作成を依頼するといくらくらいかかりますか

遺言書の作成を依頼するといくらくらいかかりますか

公正証書遺言の作成を司法書士や弁護士といった専門家に依頼した場合、公証役場に支払う実費(手数料)に加えて、その専門家への報酬が必要となります。依頼先や遺言内容の複雑さによって費用は大きく異なりますが、一般的な報酬の相場観は以下の通りです。

  • 行政書士・司法書士:おおむね10万円~20万円程度が一般的な価格帯です。財産の種類が少なく、相続関係がシンプルな場合は、比較的費用を抑えやすい傾向にあります。

  • 弁護士:20万円~30万円程度からが目安となり、財産額が大きい場合や、相続人間の関係が複雑で将来の紛争予防を重視する場合には、さらに高くなることもあります。

  • 信託銀行(遺言信託サービス):作成時の手数料として最低でも30万円以上からとなることが多く、さらに遺言書の保管料(年間数千円)や、実際に相続が発生した際の遺言執行報酬(財産額の1%~2%程度、最低100万円以上など)が別途必要となるのが一般的です。

「やっぱり高いな」と感じるかもしれませんが、これらの費用には、単に書類を作成するだけでなく、以下のようなサービスが含まれています。

  • 面倒な戸籍謄本などの必要書類の収集代行
  • 将来の相続トラブルを未然に防ぐための、専門的な視点からの遺言内容の提案
  • 公証役場との打ち合わせやスケジュール調整の代行

貴重な時間と手間を大幅に節約できるだけでなく、「これで安心」という精神的な安定を得られることが、専門家に依頼する最大のメリットと言えるでしょう。

公正証書遺言の費用は司法書士で変わる

司法書士に公正証書遺言の作成サポートを依頼する場合、その報酬は事務所によって様々ですが、一般的には10万円から20万円程度が一つの相場となっています。司法書士は「登記の専門家」として知られており、特に相続財産の中に土地や建物といった不動産が含まれている場合に、その専門知識と経験が大きな強みとなります

遺言書で不動産を特定の相続人に渡す場合、その不動産を正確に特定するために、法務局で管理されている「登記事項証明書(登記簿謄本)」の記載通りに、所在地や地番、家屋番号などを一字一句間違えずに記述する必要があります。司法書士は日常的にこれらの書類を扱っているため、ミスなく確実に手続きを進めてくれます。

さらに重要なのは、遺言者が亡くなった後、実際に遺言書の内容を実現する手続きです。不動産は、遺言書があるだけでは名義が自動的に変わるわけではなく、法務局で「相続登記」という名義変更手続きを行わなければなりません。

司法書士に遺言書の作成を依頼しておけば、将来必ず必要になるこの相続登記までを見据えた、スムーズで的確なアドバイスを受けることができるのです。相続財産に不動産がある方にとっては、非常に頼りになる存在と言えるでしょう。

公正証書遺言の費用を行政書士に依頼した場合

公正証書遺言の費用を行政書士に依頼した場合

行政書士に公正証書遺言の作成を依頼する場合、その報酬は10万円から15万円程度が相場となっており、司法書士や弁護士と比較すると、費用をやや抑えられる傾向にあります。行政書士は「街の法律家」とも呼ばれ、官公署に提出する書類作成や、権利義務に関する書類作成のプロフェッショナルです。

公正証書遺言の作成手続きにおいても、その専門性を存分に発揮してくれます。具体的には、遺言書の原案作成はもちろんのこと、手続きに不可欠な戸籍謄本や住民票といった各種証明書類の収集代行、そして公証役場との事前の打ち合わせや日程調整まで、一連のプロセスを幅広くサポートしてくれます。

こんな方に行政書士はおすすめ

  • 相続財産が預貯金や有価証券が中心で、不動産関連の複雑な問題が少ない。

  • 相続人間の関係が良好で、将来的な紛争の可能性が低い。

  • とにかく費用を抑えつつ、専門家のサポートを受けて安心できる遺言書を作成したい

上記のようなケースでは、行政書士への依頼が非常にコストパフォーマンスの高い、有力な選択肢となるでしょう。

公正証書遺言でもめるケースとは

「公証人という法律の専門家が関与して作成するのだから、公正証書遺言さえ作っておけば相続トラブルは絶対に防げる」と思われがちですが、残念ながらこれは誤解です。

公証人は、遺言が法的な形式を満たしているか(=有効か無効か)は厳しくチェックしますが、その内容が原因で相続人たちの間に感情的なしこりを残し、争いに発展する可能性までは保証してくれません。

公正証書遺言があってもトラブルになる代表的なパターンが、「遺留分」を侵害しているケースです。遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、親など)に法律で保障された、最低限の遺産の取り分のことです。

例えば、「愛人に全財産を遺贈する」といった内容の遺言書は法的には有効ですが、残された妻や子は、愛人に対して「遺留分侵害額請求」という形で、法律で定められた割合の金銭を請求する権利があります。これが、深刻な「争族」の火種となり得るのです。

その他にも、以下のようなケースでトラブルになることがあります。

  • 遺言能力の問題:遺言者が認知症などで十分な判断能力がない状態で作成されたとして、遺言の有効性自体が争われる。

  • 内容の曖昧さ:「自宅の土地」といった記載が、どの土地を指すのか特定できずにもめる。

  • 付言事項の欠如:なぜそのような財産の分け方にしたのか、という遺言者の想いが記されていないため、財産が少ない相続人が不公平感を抱き、感情的な対立に発展する。

費用をかけて作成するからこそ、こうした将来のトラブルを招かないよう、遺留分にも配慮し、ご自身の想いを付言事項としてしっかりと書き記しておくことが非常に重要です。この点こそ、専門家のアドバイスが活きる部分と言えます。

公正証書遺言は死亡したらどうなる?

公正証書遺言は死亡したらどうなる?

遺言者が亡くなり、相続が開始された後、公正証書遺言はその真価を最大限に発揮します。自筆証書遺言とは異なり、非常にスムーズに手続きを進めることができます。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 遺言書の存在確認と内容の開示:遺言書の正本または謄本は、通常、遺言者本人や遺言執行者(遺言の内容を実現する役割の人)が保管しています。相続人は、その遺言書を使って内容を確認します。

    万が一、手元の遺言書を紛失してしまっても、原本は公証役場に原則として遺言者が120歳になるまで厳重に保管されているため、再発行が可能で非常に安全です。
  2. 遺言執行者による相続手続きの開始:遺言執行者は、公正証書遺言の正本(または謄本)と自身の印鑑証明書などを使って、各金融機関での預貯金の解約・払い戻しや、法務局での不動産の名義変更(相続登記)といった具体的な手続きを進めていきます。

    各機関は、公証人が作成した公文書である公正証書遺言を非常に信頼性の高い書類として扱ってくれるため、手続きが滞ることはほとんどありません。

ここで最も重要なポイントは、自筆証書遺言の場合に必要となる家庭裁判所での「検認」という手続きが一切不要である点です。

検認は、遺言書の偽造や変造を防ぎ、その状態を保全するための手続きですが、申立てから完了まで1~2ヶ月程度の時間がかかる上、全ての相続人に裁判所から通知が送られるなど、相続人にとって大きな負担となります。

この検認手続きを省略できることは、残されたご家族にとって計り知れないメリットと言えるでしょう。

遺言書作成費用公証役場についてよくあるご質問FAQ

公正証書遺言の証人は誰に頼めばいいですか?費用はかかりますか?

証人は信頼できる友人や知人に依頼できますが、未成年者や推定相続人、受遺者などは法律上なれません。適当な人が見つからない場合、公証役場で紹介してもらうことも可能です。その場合、公証役場によりますが1人あたり1万円前後の謝礼が必要となるのが一般的です。

病気で公証役場に行けません。出張してもらう費用はいくらですか?

公証人にご自宅や病院、施設などに出張してもらうことは可能です。その場合、基本手数料が1.5倍になる「病床執務加算」という規定が適用されます。さらに、公証人の日当(1日あたり2万円、4時間までなら1万円)と、公証役場からの往復交通費(実費)が別途必要になります。

遺言書に書く不動産の価値はどうやって計算するのですか?

公証役場での手数料計算の基礎となる不動産の価額は、時価や売買価格ではなく、原則として「固定資産評価額」が用いられます。これは、毎年春ごろに市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書に添付されている「課税明細書」で確認することができます。

遺言書の内容を後から変更したい場合、また費用がかかりますか?

はい、遺言書の内容を修正したり、撤回して新しく作り直したりする場合は、基本的に最初の作成時と同じように手数料がかかります。たとえ一部の小さな変更であっても、法的に有効な形にするためには、再度公正証書を作成し直す手続きが必要となるためです。

専門家やえさん

最後までお読みいただき、ありがとうございます!遺言書作成の費用、そしてその先にある手続きまで、イメージが湧きましたでしょうか。

費用は確かに気になりますが、一番大切なのは、あなたの想いをきちんと形にして、残されたご家族が困らないようにしてあげること。この記事が、そのための第一歩となれば、これほど嬉しいことはありません。何かご不安な点があれば、いつでもお問い合わせくださいね。

遺言書作成費用を公証役場で抑えるポイントまとめ

遺言書作成費用を公証役場で抑えるポイントまとめ

  • 公正証書遺言の費用は全国一律の「公証人手数料令」で定められている
  • 基本手数料は相続させる財産の価額と受け取る人の数で計算される
  • 財産総額が1億円以下の場合、基本手数料に11,000円が加算される
  • 自分で手続きすれば費用は公証人手数料と実費のみで済む
  • 自筆証書遺言は費用がほぼかからないが、無効になるリスクがある
  • 専門家に依頼する場合の相場は司法書士・行政書士で10万円~、弁護士で20万円~が目安
  • 相続財産に不動産がある場合は司法書士が頼りになる
  • 費用を抑えつつサポートを受けたい場合は行政書士も選択肢の一つ
  • 公正証書でも「遺留分」を無視するとトラブルの原因になり得る
  • 公正証書遺言は相続開始後の「検認」が不要で手続きがスムーズ
  • 証人を公証役場に依頼すると1人1万円程度の費用がかかる
  • 公証人に出張してもらうと手数料が1.5倍になり、日当や交通費も必要
  • 手続きに必要な戸籍謄本や印鑑証明書などの取得費用も忘れずに考慮する
  • 専門家に依頼すれば、手間を省けるだけでなく法的な安心感も得られる
  • 費用と安心感のバランスを考えて、ご自身に最適な作成方法を選ぶことが重要

今日からできるアクションプラン

遺言書作成への第一歩として、まずは以下の2つから始めてみませんか?

  1. 自分の財産をリストアップしてみる:預貯金、不動産、有価証券、生命保険、ローンなど、プラスの財産もマイナスの財産も全てノートに書き出してみましょう。これが費用計算の基礎であり、遺言書作成のスタートラインです。

  2. 誰に何を遺したいか考える:ご家族一人ひとりへの想いを整理し、なぜそのように財産を分けたいのか、理由も含めて大まかに考えてみましょう。この想いを伝えるのがもめない遺言書の目的です。

この2点が明確になるだけで、公証役場や専門家への相談がぐっと具体的でスムーズになりますよ!

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堀川 八重(ほりかわ やえ)
大阪不動産・FPサービス株式会社 代表

15年以上にわたり1,500組を超えるご家族の相続や不動産のお悩みに、専門家として寄り添ってまいりました。私の信条は、法律や数字の話をする前に、まずお客様ご家族の歴史や言葉にならない想いを丁寧に「聞く」こと。信頼できる各分野の専門家チームと共に、皆様が心から安心できる最善の道筋をオーダーメイドでご提案します。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。

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