「お兄ちゃんだけ、親さんからお店を出すときにお金を援助してもらってたじゃない!その分、お兄ちゃんの遺産は少なくなるべきよ!」…なんて、相続の話し合いでいきなり言われたら、ドキッとしちゃいますよね。
良かれと思って親御さんがしてくれた生前の援助が、まさか相続で揉める火種になるなんて…。こんにちは!終活・相続・不動産コンサルタントのやえです。私もお客様から「親の家に無償で住むことは生前贈与にあたりますか?」なんてご相談をよくいただきます。
そもそも特別受益とは何か、生前贈与との違いも曖昧だったりしますよね。同居していた場合の生活費の扱いや、孫への贈与は?時効はあるの?生前贈与はなぜバレるのでしょうか?なんて疑問が次々に湧いてきて、夜も眠れなくなってしまうかもしれません。
でも、ご安心ください。この記事を読めば、そのモヤモヤがスッキリ晴れますよ!
この記事のポイント
- 特別受益と生前贈与の具体的な違いがわかる
- 特別受益に当たらないケースが具体的に理解できる
- 「持ち戻し」や「時効」など関連制度の仕組みがわかる
- 相続トラブルで損しないための重要なポイントがわかる

こんにちは、専門家のやえです。相続トラブルの多くは、実は「不公平感」という感情から始まります。特に生前の贈与は、他の相続人が知らないことも多く、後から発覚して揉め事になりがちです。「特別受益」という法律上のルールを正しく知っておくことが、ご自身の権利を守り、円満な遺産分割協議を進めるための第一歩になりますよ。
目次
特別受益に当たらない生前贈与の基本知識

そもそも特別受益とは何か
「特別受益(とくべつじゅえき)」、なんだか難しそうな言葉ですよね。でも、考え方はとってもシンプルなんです。一言で言えば、「相続財産の先渡し」のことです。
例えば、相続人が子ども2人(長男と長女)だったとします。お父さんが亡くなった時、遺産が2,000万円ありました。でも、実はお父さんは生前に、長男が家を建てる時にだけ「お祝いだ」と言って1,000万円を贈与していました。このことを全く考慮せずに遺産2,000万円を半分ずつ(1,000万円ずつ)分けるとどうなるでしょうか?
長男は生前贈与1,000万円+遺産1,000万円で合計2,000万円、長女は遺産1,000万円だけ。これって、ちょっと不公平な感じがしませんか?
特別受益の目的
このように、一部の相続人だけが亡くなった方(被相続人)から特別な利益を受けていた場合に、その利益を相続財産に足し戻して計算し直すことで、相続人間の公平を図る。これが特別受益の制度の目的になります。
つまり、長男がもらった1,000万円は「遺産の先渡し」と考えて、相続の計算をやり直すわけです。この「先渡しされた特別な利益」こそが、特別受益の正体です。こう考えると、少し身近に感じられますよね。
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特別受益と生前贈与の明確な違い

「じゃあ、親からもらったものは全部『特別受益』になるの?」というと、答えはNOです。ここが一番大事なポイントであり、多くの方が誤解しやすい部分になります。
生前贈与は、文字通り「生きている間に財産を贈与すること」全般を指す広い言葉です。お年玉や誕生日プレゼントも、広い意味では生前贈与の一種です。
一方、特別受益は、数ある生前贈与の中でも「遺産の先渡しと言えるほど特別な利益」に限定されます。法律(民法903条)では、具体的に以下の3つのケースが挙げられています。
特別受益にあたる贈与の種類 | 具体例 |
---|---|
遺贈 | 遺言によって財産を譲り受けること。これは原則すべて特別受益になります。 |
婚姻・養子縁組のための贈与 | 結婚の際の持参金や支度金、家やマンションの購入資金など。 |
生計の資本としての贈与 | 事業を始めるための開業資金、お店の運転資金、不動産や高額な自動車の購入資金など。独立して生計を立てるための元手となるような贈与です。 |

私が担当したお客様で、お父様から「お前は昔から体が弱いから」と、毎月5万円のお小遣いを20年間もらっていた方がいました。他の兄弟から「総額1,200万円の特別受益だ!」と主張されたのですが、これは生計を支える元手(生計の資本)というよりは、扶養の範囲内のお小遣いと判断され、特別受益には当たらないという結論になりました。このように、贈与の目的や趣旨がとても重要になるんです。
つまり、「生前贈与」という大きなくくりの中に、「特別受益」という特定の条件を満たしたものだけが含まれるイメージですね。
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親の家に無償で住むことは生前贈与か
これは本当に多いご相談です。「実家にずっと親と同居していて家賃を払っていなかった」「親が所有する別のアパートにタダで住まわせてもらっていた」というケースですね。家賃分が浮いているので、その分が利益=特別受益になるのでは?と心配される方がたくさんいらっしゃいます。
結論から言うと、親の「建物」に無償で住んでいた(同居していた)だけでは、特別受益にはならないとされる場合がほとんどです。
なぜなら、これは「遺産の先渡し」というよりは、親子間の扶養義務の範囲内、あるいは単なる親切心(使用貸借)と考えられるからです。親が子どもの生活を助けるのは、ある意味自然なことですよね。裁判例でも、親の建物に無償で居住していた利益は、特別受益に該当しないとするものが多いです。
「土地」の無償使用は要注意!
ただし、これが建物の話ではなく、親の「土地」の上に、子どもがお金を出して自分の家を建てて無償で土地を使っていた、というケースは話が別です。この場合、「土地の使用権」という財産的価値のある利益を贈与されたと見なされ、特別受益に該当する可能性が高くなります。実家の不動産相続で失敗しないための全知識は複雑なので、専門家への相談も検討しましょう。
このように、同じ「無償で住む」でも、建物か土地かで結論が変わってくることがあるので注意が必要です。
Q&A:よくある質問
-
親の家に同居し、親の生活の面倒を見ていました。それでも土地の無償使用は特別受益になりますか?
-
親御さんの介護や身の回りの世話を一身に引き受けていたような場合、その貢献(寄与分)が考慮されることがあります。また、土地を無償で使わせる代わりに介護をしてもらう、という暗黙の合意があったとして「持ち戻し免除の意思表示」があったと判断され、結果的に相続分が減らないケースもあります。個別の事情が大きく影響します。
-
賃貸物件として貸し出せるアパートの一室に無償で住んでいました。この場合はどうですか?
-
本来であれば家賃収入が得られたはずの物件に無償で住んでいた場合、その得られた利益(本来払うべきだった家賃相当額)が特別受益と評価される可能性は、単なる同居のケースよりは高まります。ただし、その物件の管理を任されていたなど、対価となるような事情があれば、結論は変わることもあります。
-
10年以上前に受けた贈与について、遺産分割調停で主張されました。もう反論できないのでしょうか?
-
いいえ、諦める必要はありません。上記の「相続開始から10年」というルールは、あくまで「遺産分割の手続きを開始する期限」です。相続開始から10年以内に調停などが申し立てられていれば、その中で20年前、30年前の特別受益が議論されることはあり得ます。その際は、贈与の事実や持ち戻し免除の意思表示の有無などを具体的に主張していくことになります。
同居中の生活費は特別受益になるのか

これも「無償居住」とセットでよく問題になるテーマですね。親と同居していて、食費や光熱費などを親の年金から支払ってもらっていた場合、その生活費は特別受益になるのでしょうか。
これも原則として、通常の範囲の生活費の援助であれば、特別受益には当たりません。民法では、親子や夫婦、兄弟姉妹には互いに扶養する義務(生活扶助義務)が定められています。そのため、親が子の生活を助けるのは、この扶養義務の履行の範囲内と考えられるからです。
例えば、以下のようなケースは特別受益と見なされにくいでしょう。
- 毎月の食費や光熱費を親が負担していた
- 病気になった時の治療費を出してもらった
- お小遣いとして月数万円程度もらっていた
どこからが「特別」になるの?
線引きは非常に難しいですが、判断基準としては「その家庭の資産や収入状況から見て、通常の扶養の範囲を明らかに超えているかどうか」がポイントになります。例えば、子どもが働ける状態なのに一切働かず、親に高級外車を買い与えてもらったり、毎月100万円もの生活費をもらったりしていた場合は、「生計の資本」としての贈与、つまり特別受益と判断される可能性が高まります。
私の経験上、社会通念上「ちょっと贅沢な援助だな」と感じられるレベルを超えてくると、他の相続人から主張されるケースが多いように思います。
孫への贈与は特別受益の対象外?
「ウチの子(孫)が大学に入学するときに、おじいちゃんがお祝いに100万円くれたんだけど、これは関係ある?」というご質問もよく受けます。
結論としては、被相続人(祖父母)から孫への贈与は、原則として特別受益にはなりません。
なぜなら、特別受益の制度は、あくまで「共同相続人間の公平を図るため」のものだからです。孫は、子(親)が健在である限り、祖父母の相続人ではありません。相続人ではない人への贈与は、そもそも遺産分割の計算に含める必要がない、というのが基本的な考え方です。
例外ケースに注意!「実質的に親への贈与」と見なされる場合
ただし、これには注意すべき例外があります。形式的には孫への贈与となっていても、実質的にはその親(相続人である子)への贈与と同じだと評価できる場合です。
例えば、相続人である長男が「自分名義だと贈与税がかかるから、息子の名義で受け取っておいてくれ」と頼んで、親から孫名義の口座に多額の送金がされたようなケースです。このような場合、孫は単なる名義人に過ぎず、実質的な利益は長男が受けているとして、長男の特別受益と認定される可能性があります。
対策しても生前贈与はなぜバレるのでしょうか

「内緒で親からお金をもらったんだけど、これって他の兄弟にバレるのかな…?」と心配される方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、相続が開始されると、皆さんが思っている以上に生前贈与は明らかになりやすいのです。
主な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金口座の取引履歴の調査
他の相続人は、遺産分割協議や調停のために必要であるとして、金融機関に被相続人名義の口座の取引履歴(通常、過去10年分程度)の開示を請求できます。そこに不自然な多額の出金があれば、「このお金はどこにいったのか?」と追及されるきっかけになります。 - 相続税申告での調査
相続税の申告が必要な場合、税務署は被相続人だけでなく、相続人全員の過去の預金移動も厳しくチェックします。これを「反面調査」といい、この過程で過去の贈与が発覚することは非常に多いです。税務署の調査能力は侮れませんよ。 - 不動産の登記情報
不動産を生前贈与された場合、法務局で登記情報を取得すれば、いつ、誰から誰に所有権が移ったのかが一目瞭然です。これは誰でも確認できます。
専門家やえさんの失敗談(お客様のケース)
あるお客様が、お父様から「税金対策だから」と、毎年110万円ずつ15年間にわたって現金を手渡しで受け取っていました。贈与契約書もなく、通帳にも記録が残らないため安心していたそうですが、お父様が几帳面な方で、日記に「〇月〇日、長男に110万円渡す」と毎年記録していたのです。相続が発生した際に他のご兄弟がその日記を発見し、合計1,650万円の特別受益を主張され、大変な騒ぎになりました。隠し通すのは難しいと考えた方が賢明です。
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ここまで、特別受益の基本的な考え方と、誤解されやすいケースについて解説しました。ポイントは「遺産の先渡し」と言えるかどうか、そして「扶養の範囲」を超えているかどうかです。ただ、実際の相続の現場では、法律の理屈だけでは割り切れない感情的な対立も起こりがちです。次の章では、もう少し踏み込んだ制度と注意点を見ていきましょう。
特別受益に当たらない生前贈与の制度と注意点

特別受益の持ち戻しと持ち戻し免除
さて、「特別受益」があると認定された場合、具体的にどのように遺産分割の計算に影響するのでしょうか。ここで登場するのが「持ち戻し」という考え方です。
これは、特別受益の額を、いったん相続財産に足し戻して「みなし相続財産」を算出し、それをもとに各相続人の取り分を計算する方法です。なんだか難しそうですが、具体例を見ると簡単ですよ。
【持ち戻しの計算例】
- 被相続人:父
- 相続人:母、長男、長女
- 遺産総額:5,000万円
- 長男の特別受益:1,000万円(住宅購入資金)
①みなし相続財産を計算
遺産5,000万円 + 特別受益1,000万円 = 6,000万円
②法定相続分で分割
・母:6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
・長男:6,000万円 × 1/4 = 1,500万円
・長女:6,000万円 × 1/4 = 1,500万円
③特別受益分を差し引く
長男はすでに1,000万円を先渡しでもらっているので、その分を差し引きます。
・長男の具体的相続分:1,500万円 - 1,000万円 = 500万円
【最終的な取得額】
・母:3,000万円
・長男:500万円
・長女:1,500万円
(合計:5,000万円)
このように計算することで、相続人間の公平が保たれるわけです。
持ち戻しが免除されるケースとは?
しかし、亡くなったお父さんが「長男には家業を継いでくれた恩があるから、あの1,000万円は特別にやったものだ。相続分から引かなくてもいい」と考えていたらどうでしょう?
このように、被相続人が「持ち戻しをしなくてもよい」という意思表示をしていた場合、その意思が尊重され、持ち戻し計算は行われません。これを「持ち戻し免除の意思表示」といいます。
この意思表示は、遺言書に明記しておくのが最も確実ですが、書面がなくても、生前の言動などから「黙示の意思表示」があったと認められることもあります。例えば、「お前がずっと介護してくれたから、このお金は感謝のしるしだ。他の兄弟には内緒だぞ」といった会話があった場合などがこれに当たります。
特別受益の時効と10年ルール

「父が亡くなったのは最近だけど、兄が住宅資金をもらったのはもう20年も前。そんな昔のことまで持ち出せるの?」という疑問、ごもっともです。
まず、特別受益を主張する権利自体には、厳密な意味での「時効」はありません。相続が開始すれば、何十年前に受けた贈与であっても、理論上は特別受益として主張することが可能です。
しかし、これではあまりにも昔の贈与まで対象となり、証拠も散逸してしまって、かえって紛争が複雑化してしまいます。そこで、法律が改正され、一定の期間制限が設けられました。
【注意】相続開始から10年が経過すると主張できなくなる!
2023年4月1日に施行された改正民法により、相続開始の時(亡くなった時)から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として特別受益の主張ができなくなりました(民法904条の3)。
これは、長期間放置された相続関係を早期に安定させるためのルールです。もし特別受益を主張したいのであれば、相続開始から10年以内に家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるなどの手続きを取る必要があります。
遺留分に関する「10年ルール」との違い
ここでよく混同されるのが、遺留分を計算する際の生前贈与の期間制限です。
- 特別受益:遺産分割の際の計算。原則、期間の定めはなかった(ただし上記の10年ルールが新設)。
- 遺留分:最低限の遺産を取り戻す権利の計算。相続開始前の10年間に行われた相続人への特別受益に当たる贈与のみが計算の対象となる。
遺留分は、遺言などで自分の取り分が極端に少なかった場合に主張できる権利で、特別受益とは少し別の制度です。両者の期間ルールが異なるため、注意が必要です。
参考情報サイト:法務省「民法(相続法)改正 遺産分割に関する見直し」
URL: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html
贈与の証拠がない場合の特別受益の主張
遺産分割の話し合いで、「お前は昔、親からお金をもらっていたはずだ!」と言われたけれど、自分には全く記憶がない。あるいは、もらった側が「そんなものはもらっていない」としらを切り、贈与の契約書や銀行振込の記録といった直接的な証拠がない…。これも実務ではよくあるケースです。
まず大原則として、特別受益があることを主張する側(通常は多くもらいたい相続人)が、その事実を証明する責任を負います。
これを「挙証責任(きょしょうせきにん)」といいます。「もらったはずだ」というだけでは不十分で、客観的な証拠によって「いつ、誰が、誰から、いくらもらったのか」を具体的に示す必要があります。
直接的な証拠がない場合に役立つ間接的な証拠の例
- 被相続人の日記やメモ:「長男に開業資金として300万円渡した」といった記述。
- 他の親族や知人の証言:「生前、お父さんが『長男の家の頭金を出してやった』と嬉しそうに話していた」など。
- 被相続人の預金口座の不自然な出金記録:贈与を受けた側の収入に見合わない不動産の購入や、高額な支出があった時期と、被相続人の口座からの多額の出金時期が一致しているなど。
- 贈与を受けた側のSNSの投稿など:「親に車買ってもらった!」といった過去の投稿。
やえさんの成功体験(お客様のケース)
あるご相談で、お兄様が生前にお父様から多額の援助を受けていたはずなのに、本人が認めず証拠もない、というケースがありました。諦めかけたのですが、念のためお父様の遺品を再度詳しく調べたところ、古い手帳に「〇〇(兄の名前)へ 300万」というメモが挟まっているのを発見しました。
これだけでは弱いかと思いましたが、お兄様がその直後に会社を設立しており、その会社の資本金がちょうど300万円だったのです。この2つの事実を突き合わせた結果、最終的にお兄様も特別受益の存在を認め、無事に協議がまとまりました。諦めずに証拠を探すことが重要です。
特別受益と贈与税は関係あるのか

「生前贈与を受けると贈与税がかかるって聞いたけど、特別受益と関係あるの?」というのも、よくいただく質問です。
結論から言うと、特別受益の制度(民法)と贈与税の制度(税法)は、全く別のルールで動いています。したがって、
- 贈与税がかからなかった贈与でも、特別受益になることはある。
- 贈与税を支払った贈与でも、特別受益にならないこともある。
ということが起こり得ます。
例えば、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。親から子へ110万円を贈与しても、贈与税はかかりません。しかし、その贈与が「事業の開業資金の一部として」渡されたものであれば、金額の多寡にかかわらず「生計の資本としての贈与」と見なされ、特別受益に該当する可能性があります。
逆に、毎年200万円ずつ10年間、合計2,000万円の贈与を受け、毎年きちんと贈与税を納めていたとします。しかし、その目的が単なるお小遣いであり、扶養の範囲内と判断されれば、特別受益には該当しない可能性もあるのです。
相続時精算課税制度と特別受益
少し専門的になりますが、「相続時精算課税制度」という制度を利用して生前贈与を受けた場合、その贈与財産は相続税の計算上、必ず遺産に足し戻されます。そして、この制度を使って贈与された財産は、特別受益にも該当すると考えるのが一般的です。税金の制度と相続の制度がリンクする特殊なケースと言えます。
税金を払ったかどうかと、遺産分割で公平かどうかは、別の次元の話だと理解しておくと分かりやすいかもしれませんね。
参考情報サイト:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
まとめ:特別受益に当たらない生前贈与
- 特別受益とは相続財産の「先渡し」と見なされる特別な利益のこと
- 目的は相続人間の実質的な公平を図ることにある
- 全ての生前贈与が特別受益になるわけではない
- 遺贈は原則としてすべて特別受益に該当する
- 生計の資本や婚姻のための贈与が特別受益の対象となる
- 通常の扶養の範囲内と見なされる生活費の援助は対象外
- 親の建物に無償で同居していただけでは特別受益にならないことが多い
- 親の土地を無償で使用して家を建てた場合は特別受益になる可能性が高い
- 孫への贈与は原則として特別受益の対象外
- ただし実質的に親(相続人)への贈与と見なされる例外ケースもある
- 特別受益は「持ち戻し」計算により具体的な相続分が調整される
- 被相続人に「持ち戻し免除の意思表示」があれば持ち戻しは不要
- 特別受益の主張は相続開始から10年を過ぎると難しくなる
- 贈与税の有無と特別受益の認定は直接関係しない
- 贈与の証拠がない場合は主張する側が証明責任を負う

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!特別受益の複雑な世界、少しは整理できたでしょうか。大切なのは、ご自身のケースがどのパターンに当てはまるか冷静に見極めることです。そして、もしご兄弟との話し合いが難航しそうだと感じたら、一人で抱え込まずに、なるべく早い段階で弁護士などの専門家に相談してくださいね。それが円満解決への一番の近道ですよ。
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