「遺言執行者に指定されたけど、相続人への通知ってどうすればいいの?」「遺言執行者が相続人への通知をしないとどうなるんだろう?」なんて、突然の大役に戸惑いと不安を感じていらっしゃいませんか。

結論から申し上げますと、遺言執行者相続人への通知は、2019年の民法改正によって定められた、れっきとした法的な義務なんです。ただ、この通知義務違反にはどんなペナルティがあるのか、遺言執行者の通知義務はいつから始まったのか、具体的な通知方法や、遺言執行者と相続人が同一の場合の対応など、知っておくべきポイントがたくさんあります。

例えば、遺言執行者の通知義務違反に関する判例や、まさかの刑則があるのかも気になりますよね。この記事では、遺言執行者が遺言書を相続人に通知するタイミングから、そのまま使える就任通知のひな形や通知の文例、財産目録の添付、配達証明の必要性まで、あなたの疑問をスッキリ解決します!

この記事のポイント

  • 遺言執行者の通知が法的な義務であること
  • 具体的な通知の方法とタイミング、そのまま使える文例
  • 通知義務を怠った場合の法的なリスクやペナルティ
  • 相続人との無用なトラブルを避けるための実践的な注意点

専門家やえさん

こんにちは、終活・相続の専門家やえです。遺言執行者という大役、本当にお疲れ様です。故人の最後の想いを実現するための、とても大切な役割ですよね。

でも、相続人の方への通知は、トラブルを避けるための最初の重要なステップなんです。手続きを一つ一つ丁寧に進めることが、結果的に円満な相続につながりますから、焦らず一緒に確認していきましょうね。

遺言執行者相続人への通知の基本と方法

遺言執行者相続人への通知の基本と方法

遺言執行者 通知義務 いつから始まった?

「相続人への通知が義務って、昔からそうだったかしら?」と首を傾げる方もいらっしゃるかもしれませんね。その感覚は正しく、この通知義務が法律でハッキリと定められたのは、実は比較的最近のことなのです。

具体的には、2019年7月1日に施行された改正民法によって、遺言執行者の通知義務が条文として明確に規定されました。この法改正の背景には、それまでの法律では通知が義務付けられていなかったために生じていた、さまざまな問題がありました。

改正前の法律では、遺言執行者は相続人に遺言の内容を通知する義務がなかったため、一部の相続人が遺言の存在すら知らないまま、遺言執行者が不動産の名義変更や預金の解約などの手続きを進めてしまうことが可能でした。

その結果、後から遺言の存在を知った相続人が「なぜ教えてくれなかったのか」と反発し、深刻なトラブルに発展するケースが後を絶たなかったのです。

このような状況を改善し、相続人の権利を守り、相続手続きの透明性を高める目的で、法律が改正されました。そして、「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない」という規定が新設されたのです。(民法第1007条2項)

この法改正の重要なポイントは、遺言執行者による相続人への通知が、単なる「相続を円滑に進めるためのマナー」や「専門家による推奨事項」といったレベルから、法律で定められた全ての遺言執行者が遵守すべき明確な「義務」へと変わった点です。

この点をまず初めにしっかりと理解しておきましょう。

遺言執行者が遺言書を相続人に通知するタイミングは?

遺言執行者が遺言書を相続人に通知するタイミングは?

法律で「いつまでに通知しなさい」という具体的な日付が定められているわけではありませんが、条文には「遅滞なく」と記されています。この「遅滞なく」という言葉は、法律の世界では「事情の許す限り、できるだけ速やかに」という意味で解釈されます。

「正当な理由や合理的な理由がない限り、すぐに実行してください」という、少し強い要請のニュアンスが含まれています。例えば、相続人が誰なのかを戸籍で調査するのに時間がかかっている、といった正当な理由があれば多少の遅れは許容されるかもしれませんが、基本的には遺言執行者に就任することを承諾し、任務を開始したら、ただちに通知の準備に取り掛かるべきです。

通知が不当に遅れることによるデメリットは、想像以上に大きいものがあります。

  • 相続人が遺産の状況を把握できず、不安や疑念を抱く原因になる。
  • 「何か隠しているのではないか」という憶測を呼び、相続人間の不信感を煽ってしまう。
  • 相続財産の現状把握が遅れ、その間に財産が散逸・費消されてしまうリスクが高まる。

遺言執行者としての最初の仕事が、この通知です。迅速かつ誠実な対応を心がけることが、その後の複雑な手続きを円滑に進めるための信頼関係を築く上で、非常に重要になります。

遺言執行者の通知 方法とポイント

通知の方法については、法律で「手紙で送りなさい」とか「メールを使いなさい」といった具体的な指定はありません。しかし、後の「言った、言わない」という水掛け論を避けるため、そして通知義務を果たしたことを客観的に証明するためにも、口頭やメールではなく、形に残る「書面」で行うのが鉄則です。

通知書を作成し、郵送する際には、以下の重要なポイントを必ず押さえてください。

通知する相手は「全ての相続人」

通知を送るべき相手は、戸籍調査によって確定した「全ての相続人」です。これには、遺言によって財産を受け取ることになっている相続人はもちろんのこと、遺言の内容によって遺産を一切受け取らないことになった相続人も含まれます。たとえ遺留分(法律で保障された最低限の相続分)を請求する権利がない兄弟姉妹が相続人である場合でも、例外なく通知が必要です。

遺留分のない兄弟姉妹への通知を省略してはダメ!

「財産を渡さない相手にわざわざ通知して、かえって波風を立てたくない…」そのお気持ちは痛いほど分かります。しかし、通知を省略してはいけません。

なぜなら、遺留分がない相続人であっても、例えば「遺言書自体が無効だ」と主張する権利がありますし、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合には、その財産を相続する権利があるからです。全ての相続人が遺言の存在を知ることは、法的に保護された正当な利益なのです。

通知書に記載すべき内容

通知書には、主に以下の内容を明確に記載する必要があります。

  • 遺言執行者に就任した旨:誰が、いつから遺言執行者になったのかを伝えます。
  • 被相続人の情報:亡くなった方の氏名、死亡年月日を記載します。
  • 遺言の内容:これが最も重要です。通常は、遺言書のコピーをそのまま同封します。自筆証書遺言で家庭裁判所の検認を受けた場合は、検認済証明書付きの遺言書のコピーを送付します。

これらの情報を正確に、かつ全ての相続人に公平に提供することが、遺言執行者に課せられた最初の重要な責務です。

遺言執行者の通知には配達証明が有効か

遺言執行者の通知には配達証明が有効か

通知書を郵送する際、「普通郵便で送っても大丈夫だろうか」と不安になるかもしれません。法律上、発送方法に厳格な決まりはありませんが、ご自身の責任と立場を守るためには、「いつ、誰に、どのような内容を送ったか」そして「相手がそれを受け取ったか」を公的に証明できる方法を選択することが、賢明な判断と言えます。

そのための最も有効な手段が、「内容証明郵便」と、それに付加できる「配達証明」です。

発送方法特徴と役割メリット・どのような場合に有効か
内容証明郵便郵便局が「差出日」「差出人・受取人」「文書の内容」を公的に証明してくれるサービスです。・通知した内容そのものを証拠として残せます。
・相続人との関係が良好でない場合や、後々遺言の内容で争いになる可能性が少しでもある場合に、極めて有効な手段となります。
書留+配達証明郵便物を配達した事実(配達年月日)を郵便局が記録し、差出人にハガキで知らせてくれるサービスです。書留に付けるオプションです。・相手方が郵便物を受け取った事実を証明できます。
・「通知書は受け取っていない」という将来の反論を未然に防ぐことができます。関係性が良好でも、最低限これは付けておくと安心です。

もちろん、これらのサービスには追加の料金が発生します。しかし、それは後々の深刻なトラブルを回避するための「保険」と考えることができます。特に相続財産が高額であったり、相続人間の関係が少しでも複雑であったりする場合には、多少の費用をかけてでも、これらの証明サービスを利用することを強く推奨します。詳細な手続きは日本郵便の公式サイトで確認できます。

遺言執行者の通知に財産目録は必要?

遺言執行者には、実はもう一つ、通知義務とセットで覚えておくべき重要な義務があります。それは、民法第1011条に定められた「相続財産の目録を作成し、相続人に交付する義務」です。

財産目録とは、被相続人(亡くなった方)が残した全財産をリストアップしたものです。これには、預貯金、不動産、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も全て含まれます。

法律上、就任通知(民法1007条)と財産目録の交付(民法1011条)は、それぞれ別の条文で定められた義務です。しかし、実務においては、最初の就任通知を送る際に、この財産目録も一緒に同封するのが、最も効率的で、かつ相続人にとっても親切な進め方と言えるでしょう。

財産目録を早期に交付するメリット

最初に財産の全体像をガラス張りにすることで、相続人全員が「遺産はこれだけあるんだな」と正確な情報を共有できます。これにより、不要な疑念や憶測を防ぎ、遺留分の計算やその後の手続きに関する話し合いをスムーズに進めるための、非常に重要な土台を築くことができるのです。作成には手間と時間がかかりますが、この一手間が後のトラブルを大きく減らすことにつながります。

財産目録には決まった書式はありませんが、誰が見ても分かるように、財産の種類ごとに分かりやすく記載することが求められます。

遺言執行者の就任通知で使えるひな形

遺言執行者の就任通知で使えるひな形

「いざ書面を作成するとなると、どのような形式で書けばいいのか…」と筆が止まってしまう方も多いでしょう。ここでは、様々な状況で応用できる、基本的な就任通知のひな形をご紹介します。まずはこのひな形をベースにして、ご自身の具体的な状況に合わせて内容を修正・追記していくのが良いでしょう。

ただし、これはあくまで一般的なサンプルです。相続関係が複雑な場合や、不安な点がある場合は、安易に自己判断せず、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、ご自身のケースに最適な文書を作成してもらうことをお勧めします。

遺言執行者就任通知書(ひな形)

遺言執行者就任通知書

相続人各位

拝啓

このたび、被相続人〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)の、令和〇年〇月〇日付の遺言書に基づき、私が遺言執行者に就任いたしましたので、民法第1007条第2項の規定に従い、ご通知申し上げます。

つきましては、上記遺言書の写しを本書に同封いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。

今後は、私が遺言執行者として、遺言の内容を実現するために必要な一切の職務を誠実に執り行ってまいりますので、皆様におかれましては、何卒ご理解ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

本件に関するご不明な点がございましたら、お手数ですが下記連絡先までお問い合わせください。

敬具

令和〇年〇月〇日

(遺言執行者の住所)
(遺言執行者の氏名)〇〇〇〇 印
(連絡先)〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

遺言執行者 通知の文例を紹介

上記のシンプルなひな形に、より具体的な情報を加え、財産目録も同時に送付する場合の実践的な文例をご紹介します。相続人の方々へ誠実な姿勢を伝え、安心していただくためにも、丁寧な言葉選びと構成を心がけることが大切です。

遺言執行者就任及び相続財産目録送付のご通知(文例)

遺言執行者就任及び相続財産目録送付のご通知

〒〇〇〇-〇〇〇〇
(相続人の住所)
(相続人の氏名)様

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、被相続人 〇〇 〇〇儀(令和〇年〇月〇日永眠、最後の住所:〇〇県〇〇市〇〇)に関しまして、故人が生前に作成いたしました令和〇年〇月〇日付公正証書遺言(あるいは自筆証書遺言)により、私が遺言執行者として指定されました。つきましては、このほど正式に遺言執行者に就任いたしましたので、民法第1007条第2項に基づき、ここにご通知申し上げます。

つきましては、上記遺言書の写しを同封いたしましたので、謹んでご確認くださいますようお願い申し上げます。

また、遺言執行者の職務として、民法第1011条に基づき相続財産の調査を行い、相続財産目録を作成いたしましたので、併せてご送付いたします。今後、本遺言書及び財産目録に基づき、故人の遺志に沿って、遺言の執行を滞りなく進めてまいる所存でございます。

相続人の皆様におかれましては、本件手続きを進めるにあたり、多大なるご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

敬具

令和〇年〇月〇日

(遺言執行者の住所)
(遺言執行者の氏名)〇〇〇〇 印
(連絡先)〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

このように、法的根拠となる条文(民法第〇〇条)を文中に示すことで、手続きが法律に則って適正に行われていることを伝え、通知の説得力を高めることができます。

遺言執行者と相続人が同一の場合の通知

遺言執行者と相続人が同一の場合の通知

相続人の中から遺言執行者が指定されるケースは非常に多く、「自分が相続人であり、かつ遺言執行者でもある場合、他の相続人への通知は省略しても良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

この問いに対する答えは、「いいえ、一切省略できません」です。たとえご自身が相続財産を受け取る当事者の一人であったとしても、法律上の立場は「相続人としての立場」と「遺言執行者としての立場」の二つを併せ持つことになります。

遺言執行者は、特定の相続人の利益のためではなく、故人の遺志を実現するために、全ての相続人に対して中立・公平な立場で職務を遂行することが求められます。そのため、遺言執行者に就任した以上は、たとえ親しい間柄の家族であっても、他の相続人全員に対して、第三者が遺言執行者になった場合と全く同じ内容の通知を、同じ方法で行う義務を負うのです。

ご自身に対する通知はもちろん不要ですが、それ以外の相続人への通知義務が免除されることは決してありませんので、この点はくれぐれもご注意ください。

専門家やえさん

通知の基本、お分かりいただけましたか?少し面倒に感じるかもしれませんが、最初に「きちんと法律に則って、誠実に進めますよ」という姿勢を示すことが、後のスムーズな手続きの鍵になります。

ここからは、もしこの大切な「通知」を怠ってしまったらどうなるのか、という少しシビアな話も見ていきましょう。リスクを知ることも、ご自身を守るためにはとても大切ですよ。

遺言執行者相続人への通知を怠るリスク

遺言執行者相続人への通知を怠るリスク

遺言執行者が相続人への通知をしないとどうなる?

法律で定められたこの重要な通知義務を、もし怠ってしまった場合、遺言執行者自身が様々な法的リスクを負うことになりかねません。これは決して軽い問題ではなく、深刻な結果を招く可能性があります。

具体的には、主に以下の三つの大きなリスクが考えられます。

  1. 相続人からの損害賠償請求
    通知がなかったことによって相続人が何らかの損害を被ったと主張された場合、遺言執行者はその損害を賠償するよう請求される可能性があります。例えば、「通知があれば遺留分侵害額請求権を時効(相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年)になる前に行使できたのに、通知がなかったせいで権利が消滅してしまった」といったケースが典型例です。

  2. 家庭裁判所への解任請求
    相続人やその他の利害関係者は、遺言執行者に「任務を怠ったとき、その他正当な事由があるとき」は、家庭裁判所にその解任を請求することができます(民法1019条)。通知義務という法律上の基本的な義務を履行しないことは、この「任務懈怠」に該当する可能性が十分にあります。

  3. 深刻な相続トラブルの誘発
    法的なリスク以上に現実的なのが、相続人間の感情的な対立の激化です。「なぜ自分だけ知らされなかったのか」「何か財産を隠しているのではないか」といった不信感は、一度生まれると払拭するのが非常に困難です。本来なら話し合いで解決できたはずの問題が、通知を怠ったばかりに、長期にわたる深刻な紛争(いわゆる"争続(あらそうぞく)")へと発展してしまう恐れがあります。

「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない重要な義務です。遺言執行者に就任したら、何よりもまず、全ての相続人への通知を最優先事項として取り組む必要があります。

遺言執行者の通知義務違反とは

遺言執行者の通知義務違反とは

「通知義務違反」と聞くと、単純に「通知を全くしない」ことだけを想像するかもしれません。しかし、法律的に「義務を果たしていない」と判断されるのは、それだけではありません。

以下のような行為も、通知義務違反と見なされる可能性がありますので、注意が必要です。

これも「通知義務違反」にあたる可能性が!

  • 一部の相続人にしか通知しない
    遺言の内容を伝えるのが気まずい、関係性が悪いといった理由で、特定の相続人を意図的に除外して通知する行為は、執行者の公平性を著しく欠く重大な義務違反です。

  • 通知が正当な理由なく著しく遅れる
    就任後、特に理由もないのに何か月も通知をせず、その間に預金の解約などの執行行為を進めてしまうと、任務懈怠を問われる可能性があります。

  • 通知の内容が不十分である
    「遺言執行者になりました」という事実だけを伝え、肝心の遺言の内容(コピーの送付など)を伝えない場合も、民法1007条2項が求める「遺言の内容を通知」したことにはならず、義務を果たしたとは言えません。

遺言執行者に求められるのは、「全ての相続人」に対して、「遅滞なく」、「遺言の内容を含む適切な情報」を公平に提供する、という誠実な姿勢です。このいずれかが欠けても、義務違反を問われるリスクがあることを理解しておきましょう。

遺言執行者の通知義務違反に関する判例

2019年の法改正以降、通知義務違反そのものが直接的な争点となった最高裁判所の判例はまだ蓄積されていません。しかし、それ以前から、遺言執行者の責任について判断した裁判例は数多く存在し、それらは現在の法律を解釈する上でも非常に参考になります。

判例において一貫して示されているのは、遺言執行者は「善良な管理者の注意をもって(善管注意義務)」その職務を行わなければならない、という原則です。これは、「その人の職業や社会的地位などに応じて、一般的に要求される程度の注意を払う義務」を意味します。

相続人への通知は、遺言執行者がその職務を開始する上での最も基本的かつ重要な行為です。したがって、この通知義務を怠ることは、間違いなく「善管注意義務違反」の一部を構成すると評価される可能性が極めて高いと言えます。

実際に、遺言執行者が遺産の調査や管理を怠った結果、相続人に損害を与えたとして、損害賠償責任を認めた判例は存在します(例:東京地裁 平成23年9月16日判決など)。

今後、通知義務違反が原因で相続人が遺留分請求の機会を失った、といった事案で、遺言執行者の責任を問う訴訟が起きた場合、この善管注意義務違反が大きな争点となることが予想されます。詳しくは裁判所のウェブサイトで判例を検索することも可能です。

遺言執行者の通知義務違反に刑則はあるのか

遺言執行者の通知義務違反に刑則はあるのか

「義務違反をしたら、何か罰金や懲役といった刑罰を受けることになるの?」というご心配をされる方もいらっしゃるかもしれませんね。

この点については、ご安心ください。結論から言うと、遺言執行者が相続人への通知義務に違反したこと自体を直接罰するような刑事罰(刑則)の規定はありません。通知を怠ったからといって、警察沙汰になったり、前科がついたりすることはないのです。

その理由は、相続が基本的に個人と個人の間の財産関係、つまり「民事」の領域に属する問題だからです。法律は、当事者間のトラブル解決を民事上のルール(損害賠償など)に委ねており、直ちに国家が刑罰権を発動するような性質の問題とは考えていないのです。

しかし、これは「義務を軽視してよい」ということでは決してありません。繰り返しになりますが、刑事罰がないからといって、民事上の責任が軽くなるわけではないのです。

刑罰はなくても、民事上の責任は重い

  • 損害賠償責任:相続人に与えた損害を、ご自身の財産から金銭で賠償しなければならない責任。
  • 解任:遺言執行者としての地位を剥奪され、社会的な信用を失う可能性。

特に損害賠償は、相続財産が高額な場合、非常に大きな金額になる可能性も秘めています。刑罰がないからと安易に考えず、法律上の義務として、誠実に対応することが、結果的にご自身を守る最善の策となるのです。

遺言執行者の通知についてよくあるご質問FAQ

Q1. 通知書は手書きでも大丈夫ですか?

A1. はい、手書きでもパソコン作成でも問題ありません。ただし、誰が読んでも分かるように、丁寧で明確な字で書くことが大切です。内容が重要なので、形式よりも正確さが求められます。

Q2. 相続人が海外に住んでいる場合はどうすればいいですか?

A2. 海外在住の相続人にも、もちろん通知義務があります。国際郵便(EMSなど追跡可能な方法が望ましい)を利用して、同じように書面で通知を行いましょう。時差や郵便事情を考慮し、早めに手続きを開始することが肝心です。

Q3. 通知した相続人から連絡がありません。どうすればいいですか?

A3. 配達証明などで相手が受け取ったことが確認できているなら、法的な通知義務は果たしたことになります。その後は、遺言執行者として淡々と手続きを進めて問題ありません。ただし、後のトラブル防止のため、通知した事実の記録はしっかり保管しておきましょう。

専門家やえさん

お疲れ様でした!遺言執行者の通知義務について、その重要性と具体的な方法、そしてリスクまでご理解いただけたでしょうか。

故人の大切な遺言を巡って、ご家族が争うことほど悲しいことはありません。遺言執行者は、その架け橋となる重要な役割を担っています。

最後に、この記事のポイントをしっかりおさらいして、自信を持ってその大役を果たしてくださいね。

遺言執行者相続人への通知の重要性のまとめ

遺言執行者相続人への通知の重要性のまとめ

  • 遺言執行者相続人への通知は2019年7月の民法改正で法的義務となった
  • 任務を開始したら「遅滞なく」全ての相続人へ通知が必要
  • 通知方法は書面が基本で遺言書のコピーを同封するのが一般的
  • 後のトラブル防止のため内容証明や配達証明の利用を推奨する
  • 就任通知と併せて財産目録も送付すると手続きがスムーズに進む
  • 遺産を一切受け取らない相続人や遺留分がない兄弟姉妹にも通知は必要
  • 遺言執行者自身が相続人の一人であっても他の相続人への通知義務は免除されない
  • 通知義務違反に直接的な刑事罰(刑則)はない
  • ただし民事上の損害賠償請求や解任請求のリスクがある
  • 通知を怠ることは相続人間の不信感を生みトラブルの原因となる
  • 通知のひな形や文例を参考に誠実な内容の書面を作成する
  • 通知義務は遺言執行者の善管注意義務の根幹をなす行為である
  • 海外在住の相続人にも同様に通知する義務がある
  • 通知の事実を証明する記録は必ず保管しておく
  • 適切な通知は円満な遺言執行の第一歩である

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堀川 八重(ほりかわ やえ)
大阪不動産・FPサービス株式会社 代表

15年以上にわたり1,500組を超えるご家族の相続や不動産のお悩みに、専門家として寄り添ってまいりました。私の信条は、法律や数字の話をする前に、まずお客様ご家族の歴史や言葉にならない想いを丁寧に「聞く」こと。信頼できる各分野の専門家チームと共に、皆様が心から安心できる最善の道筋をオーダーメイドでご提案します。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。

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