「亡くなった親の相続手続きで、急に印鑑証明書が必要だと言われたけど、そもそも相続に印鑑証明書は必要ですか?」「他の相続人から『印鑑と印鑑証明書を渡してほしい』と言われて、渡したくないなと不安に感じている…」そのようなお悩みで、この記事にたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺産相続手続きは複雑なことが多く、急な相続で何から手をつければ良いか分からず、困惑してしまうのは当然のことです。特に遺産分割協議書に押す実印や、それを証明する印鑑証明は、非常に重要な書類ですよね。
結論からお伝えしますと、遺産相続に印鑑証明は、ほとんどのケースで必要不可欠な書類です。しかし、遺産分割協議書では印鑑証明書が不要になるケースや、相続で実印が不要になる場合もあります。
また、親が死亡した際に印鑑証明が必要なのはなぜか、死亡後に何通取得すればよいのか、遺産相続の印鑑証明は何に使うのかなど、疑問は尽きないことでしょう。
そこで、この記事では相続印鑑証明なぜ必要かという疑問に答えながら、相続手続きで印鑑証明や戸籍謄本が求められる理由、また、相続で印鑑を押さないとどうなるのかなど、相続の専門家として分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、あなたの疑問が解消され、安心して次のステップへ進めるはずですよ。
この記事のポイント
- 相続手続きで印鑑証明書が必要な理由と具体的な場面
- 印鑑証明書が不要なケースと、その判断方法
- 他の相続人へ印鑑証明書を渡したくない場合の対策
- 印鑑登録から取得、海外在住者の対応まで全体像を把握
目次
相続印鑑証明なぜ必要?基本的な役割と手続きを解説します


こんにちは
相続手続きって、本当に大変ですよね。私の経験上、お客様は「印鑑証明書」という言葉を聞いただけで、不安になったり、どうすればいいのか分からなくなったりすることが多いのです。
特に、他の相続人から提出を求められると、「何に使われるんだろう…」と心配になりますよね。専門家として、そのような不安を一つずつ解消していくお手伝いができれば嬉しいです。
相続に印鑑証明書は必要ですか?
相続手続きにおいて、印鑑証明書はほとんどのケースで必要になる大切な書類です。特に、相続人が複数いる場合に、誰がどの遺産を引き継ぐかを話し合って決める遺産分割協議が成立したことを証明する際に、印鑑証明書が不可欠となります。
なぜなら、遺産分割協議書には相続人全員の実印を押す必要があり、その実印が本物であることを証明するために、印鑑証明書を添付する必要があるためです。
つまり、印鑑証明書は相続人の意思表示を裏付ける重要な役割を担っているのです。逆に言えば、これがなければ協議が成立したことの証明が難しくなります。
印鑑証明書が必要な理由は何ですか?

相続手続きで印鑑証明書が必要とされる理由は、主に「本人の意思確認」と「書類の信頼性担保」の二点にあります。印鑑証明書は、市区町村に登録された印鑑、つまり実印が間違いなく本人のものであることを公的に証明する書類です。
不動産の名義変更や金融機関での手続きなど、財産に関わる重要な手続きにおいては、なりすましや不正を防ぐために厳格な本人確認が求められます。
ここで実印と印鑑証明書がセットで使われることで、その書類に押された印鑑が間違いなく本人の意思に基づいて押されたものであることを証明できるのです。これは、相続人全員の合意を証明するうえでも、非常に重要な手続きとなっています。
印鑑証明書の有効期限について
印鑑証明書自体に有効期限は定められていませんが、提出先によっては「発行から3ヶ月以内」や「6ヶ月以内」などの期限が設けられていることが多いです。
特に金融機関や法務局では期限を設けているケースがほとんどですので、手続きの際は必ず事前に確認しましょう。なお、相続税申告においては、印鑑証明書に有効期限はありません。
遺産相続で印鑑証明書は何に使うか
遺産相続において、印鑑証明書が具体的にどのような場面で使われるかをご説明します。主なケースとしては、まず遺産分割協議書の作成が挙げられます。前述の通り、これは相続人全員が合意した証拠として、実印の押印と印鑑証明書の添付が必要です。
次に、亡くなられた方の銀行口座や証券口座の名義変更や払い戻し手続きを行う際にも、金融機関に提出が求められます。また、相続財産に不動産が含まれている場合は、法務局で相続登記を行う際に必要となります。
さらに、相続税の申告においても、遺産分割協議書に添付する形で印鑑証明書を提出します。このように、印鑑証明書はさまざまな手続きで、相続人の合意や本人の意思を証明する役割を果たしています。
注意:公正証書遺言の場合
公正証書遺言がある場合、遺言書自体に公証役場での厳格な本人確認がされているため、通常は遺産分割協議書の作成は不要です。しかし、遺言書に記載のない財産がある場合や、相続人全員が遺言書とは異なる分割方法に合意した場合は、遺産分割協議書を作成することになり、印鑑証明書が必要となります。
死亡後に印鑑証明書が必要になる場面

ご家族が亡くなられた後、印鑑証明書が特に必要になるのは、遺産分割協議が確定した後の各種手続きです。具体的には、不動産の相続登記や、預貯金の払い戻し、株式の名義変更などですね。
例えば、不動産の名義変更では、法務局に遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を提出することで、故人から相続人への所有権移転を登記します。これらの手続きは、原則として遺産分割協議が済んでから行われることが多いので、親が死亡した後の手続きの際に、他の相続人から印鑑証明書を求められることがよくあります。
生命保険金の請求の場合は、受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の成立を待たずに受取人の方の印鑑証明書だけで手続きが可能です。ただ、金融機関によっては手続き方法が異なる場合もあるので、事前に確認することをおすすめします。
親が死亡した際の印鑑証明の取得方法
親が死亡した後、相続人自身の印鑑証明書を取得する手順をご説明します。まず、印鑑証明書を取得するには、実印の登録(印鑑登録)が済んでいることが前提です。印鑑登録がまだお済みでない方は、まず住民登録をしている市区町村役場で印鑑登録の手続きを行ってください。
この手続きは本人であれば、マイナンバーカードや運転免許証といった顔写真付きの本人確認書類を持参すれば即日完了することが可能です。一度登録すれば、その後は役所の窓口か、マイナンバーカードを利用してコンビニでも取得できます。
コンビニ交付は手数料が安く、夜間や休日でも取得できてとても便利ですよ。ただし、コンビニ交付の場合は代理人による取得はできないのでご注意ください。詳しくは、お住まいの市区町村の公式ウェブサイトをご確認いただくと確実です。
(参照:総務省「証明書コンビニ交付サービス」)
どんな場合に相続印鑑証明が必要ない?疑問にお答えします

「専門家やえさん」

印鑑証明書が必要なケースを説明してきましたが、実は「不要」になるケースもあります。
特に、相続人同士で話がまとまらない場合に「印鑑押さないとどうなるんだろう…」という不安を抱えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、そんな皆様の疑問に寄り添って、具体的なケースと対処法を解説していきます。
遺産分割協議書で印鑑証明書が不要になるケース
遺産分割協議書を作成する場合、通常は相続人全員の印鑑証明書が必要になります。ただ、例外的に不要となるケースも存在します。相続人が一人しかいない場合、遺産の分割について話し合う必要がないため、遺産分割協議書自体を作成しません。
そのため、印鑑証明書も不要になります。もう一つは、有効な遺言書がある場合です。遺言書に遺産の分け方が明確に記されていれば、遺産分割協議は不要となり、遺言書に基づいて手続きを進めます。
ただし、遺言書の内容と異なる分割方法にする場合は、遺言書の内容を変更するための遺産分割協議が必要になり、結局印鑑証明書が必要となることが多いです。また、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割方法が決定した場合も、印鑑証明書は不要です。
印鑑証明書が不要なケースまとめ
ケース | 遺産分割協議 | 印鑑証明書 |
---|---|---|
法定相続人が一人のみ | 不要 | 不要 |
有効な遺言書がある | 原則不要 | 原則不要 |
家庭裁判所の調停・審判で決定 | 不要 | 不要 |
相続で実印が不要となるのはどんな時か
相続手続きで実印が不要になるのは、遺産分割協議やそれに伴う手続きが必要ないケースです。例えば、法定相続人が一人だけの場合や、有効な遺言書があり遺産分割協議が不要なケースですね。他にも、相続放棄の手続きを行う際には実印ではなく、家庭裁判所に提出する申述書に署名するだけでよく、実印の押印や印鑑証明書の添付は不要です。
ただし、家庭裁判所から相続放棄の照会書が送られてきた際の回答書には、実印を押すように求められるケースが多いので注意が必要です。これは、申請者の意思を改めて確認するためです。
つまり、実印や印鑑証明書は、相続人が複数いる中で、遺産をどのように分けるかという意思決定の場面で必要となるのです。
印鑑証明書がない場合の対処法
印鑑証明書がない場合でも、慌てる必要はありません。まず、印鑑登録がまだ済んでいない方は、市区町村役場で手続きをしてください。本人であれば即日登録できますし、代理人でも日数はかかりますが手続きは可能です。
また、海外に居住していて印鑑登録ができない方もいらっしゃいますよね。その場合は、印鑑証明書の代わりに「署名証明(サイン証明)」を利用します。これは、現地の日本大使館や領事館で、本人の署名が間違いなく本人によるものであることを証明してもらうものです。海外にお住まいの方にとっては、この署名証明が、日本の印鑑証明書と同じ役割を果たします。
さらに、未成年の方が相続人である場合、親権者も相続人になると利益が相反するため、親が代理人になれません。その場合は家庭裁判所で特別代理人を選任してもらい、その特別代理人の印鑑証明書を準備する必要があります。
相続の印鑑証明書についてよくあるご質問FAQ

-
印鑑証明書はなぜ必要なのですか?
-
印鑑証明書は、遺産分割協議書に押された実印が本人のものであることを公的に証明するために必要です。これにより、書類の信頼性が担保されます。
-
印鑑証明書はどこで取得できますか?
-
住民登録をしている市区町村役場の窓口、もしくはマイナンバーカードを利用してコンビニでも取得が可能です。
-
相続手続きで必要な印鑑証明書は何通くらいですか?
-
手続きの内容にもよりますが、一般的には3通から5通程度用意しておくと安心です。必要に応じて追加で取得することもできます。
-
遺産分割協議書に印鑑を押さないとどうなりますか?
-
相続人全員の合意が得られないため、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの手続きがすべて進まなくなってしまいます。
-
印鑑証明書を他の相続人に渡したくないのですが、どうすれば良いですか?
-
司法書士や弁護士などの専門家に依頼して手続きを代行してもらうか、ご自身が代表となって手続きを進める方法があります。
相続で印鑑証明と戸籍謄本が求められる理由
相続手続きでは、印鑑証明書と合わせて戸籍謄本もセットで求められることが多いです。これは、両者が異なる役割を担っているからです。戸籍謄本は、故人との関係性を証明するものです。具体的には、誰が故人の法定相続人であるかを確認するために使われます。
例えば、配偶者や子、兄弟姉妹など、法律上の相続権を持つ人が誰であるかを公的に証明する書類です。一方で、印鑑証明書は、その相続人全員が遺産の分け方に合意していることを証明するためのものです。
つまり、戸籍謄本で「誰が相続人か」を明らかにし、印鑑証明書で「その相続人全員が協議の内容に合意したか」を証明する、という二つの異なる目的で使われるのです。両方揃えることで、手続きの正当性を証明できる仕組みになっています。
(参照:法務省「戸籍」)
兄弟間で印鑑を押さないとどうなるのか

遺産分割協議で兄弟姉妹や他の相続人が印鑑を押してくれない場合、手続きは進まなくなってしまいます。なぜなら、遺産分割協議書は相続人全員の合意があって初めて有効となるからです。
もし一人でも印鑑を押さない相続人がいると、不動産の名義変更や銀行預金の払い戻しといった手続きが全て止まってしまいます。当然、相続税の申告も難しくなります。
このような状況になったら、まずは話し合いの機会を改めて設け、なぜ印鑑を押してくれないのか理由を尋ねることが大切です。金銭的な不満や、特定の遺産に対する思い入れなど、理由を理解することで解決策が見えてくるかもしれません。
それでも解決しない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や審判といった公的な手続きを利用することを検討しましょう。調停や審判で決定された内容は法的な効力を持つため、印鑑がなくても手続きを進めることが可能になります。
印鑑証明書を他の相続人に渡したくない場合の対処法
「他の相続人に実印と印鑑証明書を預けてほしい」と言われても、安易に渡してしまうことは絶対に避けてください。たとえ家族であっても、悪意を持って不利な遺産分割協議書を作成されるリスクがゼロとは言い切れません。
このような状況になった場合は、ご自身が代表相続人となって手続きを進めるか、司法書士や弁護士といった専門家へ依頼するという方法をおすすめします。専門家であれば、あなたの印鑑証明書を預かり、適切な手続きのみに利用してくれます。
また、手続きの際に専門家と一緒に役所や金融機関へ出向くという方法もあります。こうすることで、大切な書類が何に使われているのかを常に把握でき、悪用される心配もなくなります。信頼関係が築けている場合でも、念のため専門家に立ち会ってもらうことで安心できますよね。
印鑑証明書の悪用を防ぐ対策
・自分自身が手続きの窓口となる
・司法書士や弁護士など専門家へ依頼する
・手続きの都度、専門家や相続人と同行して提出する
相続手続きで必要な印鑑証明書は何通か

相続手続きで必要な印鑑証明書の枚数は、どのような財産を相続するかによって異なります。一般的には、手続き全体を通して3通程度用意しておけば足りることが多いです。
しかし、不動産の名義変更や預金口座の払い戻しなど、複数の手続きを同時に行う場合は、それぞれに1通ずつ必要になることがあります。また、金融機関では印鑑証明書の発行から3ヶ月以内という有効期限が定められていることも多いため、必要になった都度取得する方が良いかもしれません。
手数料は1通数百円程度なので、まとめて取得するよりも、必要に応じて取得する方が効率的です。ただし、遺産分割協議書に添付して提出する分は、全員分まとめて用意しておくことがおすすめです。
相続印鑑証明なぜ必要?その理由と注意点を総まとめ
- 相続手続きにおいて印鑑証明書は、相続人全員の意思確認と合意を公的に証明する重要な役割を果たす
- 特に遺産分割協議書を作成する際には、相続人全員の実印と印鑑証明書が不可欠
- 印鑑証明書が必要となる主な手続きは、不動産登記、預貯金・有価証券の名義変更、相続税申告など
- 相続人が一人しかいない場合や有効な遺言書がある場合は、遺産分割協議が不要なため印鑑証明書も不要となる
- 印鑑証明書は、市区町村役場やコンビニで取得可能であり、発行に際しては印鑑登録が前提となる
- 海外在住の相続人は、印鑑証明書の代わりに現地の日本大使館で署名証明を取得する
- 未成年者が相続人の場合は、家庭裁判所で特別代理人を選任し、特別代理人の印鑑証明書が必要となる
- 他の相続人に印鑑証明書を渡したくない場合は、専門家へ手続きを依頼するか、自分で手続きを行うと良い
- 兄弟間で印鑑を押さない相続人がいる場合は、話し合いか、家庭裁判所の調停・審判を検討する
- 印鑑証明書自体に有効期限はないが、提出先によっては「発行から3ヶ月以内」など期限が設定されていることが多い
- 印鑑証明書と戸籍謄本は、それぞれ異なる役割(本人確認と相続人確認)を担うため両方が求められる
- 相続税申告では、遺産分割協議書に印鑑証明書を添付する
- 相続手続き全体で必要な印鑑証明書の枚数は3通程度が目安だが、複数手続きを同時並行で行う場合は追加で必要になることがある
- 遺産分割協議書に印鑑を押さないと、遺産の名義変更などが一切進まなくなる
- 印鑑登録がまだ済んでいない場合は、相続手続きに先立ってまず印鑑登録を済ませる必要がある

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
相続手続きは、印鑑証明書一つとっても、知らないと不安になることばかりですよね。大切な家族を亡くして悲しみや混乱の中にいらっしゃる時に、複雑な手続きでさらに負担を抱えてしまうことは避けたいものです。
もし、この手続きが少しでもご自身の力だけで難しいと感じた時は、どうぞ一人で抱え込まずに専門家を頼ってください。皆様の相続が少しでもスムーズに進むよう、心から願っています。
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堀川 八重(ほりかわ やえ)
大阪不動産・FPサービス株式会社 代表
15年以上にわたり1,500組を超えるご家族の相続や不動産のお悩みに、専門家として寄り添ってまいりました。私の信条は、法律や数字の話をする前に、まずお客様ご家族の歴史や言葉にならない想いを丁寧に「聞く」こと。信頼できる各分野の専門家チームと共に、皆様が心から安心できる最善の道筋をオーダーメイドでご提案します。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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