「長年の仕打ちを考えると、どうしてもあの子供に遺産を渡したくない…」そんな風に、親に遺産を渡したくない場合はどうすればいいですか?と悩んでいませんか。
結論から言うと、相続廃除は非常に難しく、感情的な理由だけでは認められない事例がほとんどです。
だし、相続廃除になる理由は何ですか?と疑問に思うように、法律で定められた要件を満たせば可能です。相続廃除の重大な侮辱とは何か、相続欠格との違いは何かを正しく理解しなくてはなりません。
この記事では、相続廃除が難しいとされる理由、具体的な判例や事例を交え、子供や兄弟への適用、遺言での相続人廃除の方法、推定相続人の廃除と遺留分、代襲相続への影響まで、あなたの悩みを解決するために分かりやすく解説しますね。
この記事のポイント
- 相続廃除が認められる法的な理由と具体的な条件
- 裁判所の判例から見る「認められるケース」と「認められないケース」
- 遺言を活用した相続廃除の手続き方法と注意点
- 相続廃除が遺留分や代襲相続にどう影響するのか

こんにちは!終活・相続・不動産相続の専門家、やえです。
ご家族との関係で「財産を渡したくない」と考えるのは、本当にお辛いことですよね。私もこれまで多くのご相談を受けましたが、そこには一言では語れない深い事情があります。相続廃除は強力な手段ですが、ハードルが高いのも事実。
でも、諦める前に知っておくべきこと、できることは沢山あります。この記事で、あなたの想いを実現するための一歩を一緒に見つけていきましょう。
目次
知っておくべき相続廃除認められない事例

相続廃除になる理由は何ですか
まず、「そもそも相続廃除になる理由は何ですか?」という根本的な疑問からお答えしますね。相続廃除は、被相続人(財産を残す人)の個人的な感情だけで自由にできるものではなく、法律(民法第892条)で厳格に定められた理由が必要です。この条文は、相続という重要な権利を制限するための、いわば「最後の砦」のようなものなのです。
具体的には、以下の3つのケースに限定されています。これらは、単なる親子喧嘩や一時的な感情のもつれとは一線を画す、深刻な状況を想定しています。
【相続廃除が認められる3つの理由】
- 被相続人に対する「虐待」があったとき
これは、継続的な暴力や身体的苦痛を与える行為だけを指すわけではありません。例えば、生活費を渡さない、必要な医療を受けさせないといった経済的な虐待(ネグレクト)も含まれることがあります。重要なのは、その行為が被相続人の心身に耐え難い苦痛を与えたという事実です。 - 被相続人に対する「重大な侮辱」があったとき
被相続人の人格や尊厳を著しく傷つける言動を指します。公然の場で繰り返し罵倒する、虚偽の悪い噂を流して社会的な評価を貶めるなど、その行為が悪質かつ執拗であることが求められます。 - その他の「著しい非行」があったとき
例えば、被相続人の財産を勝手に浪費して多額の借金を負わせる、重大な犯罪行為を犯して家族に多大な迷惑をかける、といった行為が該当します。これも一回きりの過ちではなく、改善の見込みがないほど素行が悪いという点が重視されます。
これらの行為によって、被相続人と推定相続人との間の信頼関係が、客観的に見て回復不可能なまでに破壊されたと認められる場合に限り、家庭裁判所への申立てによって相続廃除が審理されます。
つまり、「性格が合わない」「疎遠になっている」「介護してくれなかった」といった理由だけでは、相続廃除は認められないのが厳しい現実です。
相続廃除の重大な侮辱とは

3つの理由の中でも、特に判断基準が曖昧で難しいのが「重大な侮辱」です。どこからが単なる暴言で、どこからが法的に「重大」と判断されるのでしょうか。これは多くの方が悩むポイントです。
過去の判例を紐解くと、裁判所はその言動が「一時的な感情のもつれ」から来たものか、それとも「被相続人の人格を根本から否定する悪意」に基づくものかを慎重に見極めています。
例えば、以下のようなケースでは「重大な侮辱」とは認められにくいでしょう。
「重大な侮辱」と認められにくい例
- 親子喧嘩がヒートアップし、カッとなって「勝手にしろ!」「もう親とは思わない!」などと感情的な言葉をぶつけてしまった。
- 遺産分割の話し合いで意見が対立し、「あなたは強欲だ」などと非難してしまった。
- 長年の嫁姑関係の悪化が背景にあり、その不満から被相続人に対して侮辱的な態度をとってしまった。
これらのケースでは、言動自体は不適切であったとしても、その背景に複雑な家族関係があり、一方的に相続人のみが悪いとは断定できないと判断されがちです。
一方で、第三者の前で繰り返し「恥ずかしい親だ」と罵倒し続けたり、虚偽の犯罪歴を言いふらして社会的な信用を失墜させたりするような行為は、「重大な侮辱」と判断される可能性が高まります。
最終的に重要なのは、その行為の継続性、執拗さ、悪質性、そしてそれによって被相続人が受けた精神的苦痛の度合いが、社会通念上、親子関係を修復不可能なレベルにまで至らしめたと客観的に証明できるかどうか、という点になります。
なぜ相続廃除は難しいのか
ここまで読んで、「なんだか相続廃除って難しいな…」と感じたかもしれません。そのご認識は、全くもって正しいです。相続廃除の申立てが家庭裁判所で認められるためのハードルは、一般の方が想像する以上に高いのが実情です。
その最大の理由は、相続権が憲法で保障された財産権の一部であり、相続人にとって非常に重要な権利であるためです。裁判所はその権利を被相続人の一方的な意思で剥奪することに対して、極めて慎重な姿勢をとります。
被相続人の「あいつには相続させたくない」という主観的な感情だけでなく、第三者である裁判官が「この相続人に財産を渡すのは、社会の常識から見ても不当だ」と納得できるだけの、客観的で明白な証拠が何よりも求められます。
実際に、司法統計は相続廃除の難しさを物語っています。裁判所の司法統計年報によると、令和5年に終結した「推定相続人の廃除及びその取消し」に関する審判222件のうち、申立てが全面的に認められた「認容」はわずか52件。単純計算で認容率は約23.4%と、4件に1件程度しか認められていないことになります。
このため、相続廃除を真剣に考えるのであれば、感情的な訴えだけでは不十分です。虐待や侮辱、非行の事実を具体的に証明できる日記、メール、録音データ、写真、診断書、第三者(親族や友人、ケアマネージャーなど)の陳述書、警察への相談記録といった、具体的かつ客観的な証拠を、いかに粘り強く集められるかが、申立ての成否を分ける最も重要な鍵となります。
似て非なる相続欠格との違い

相続権を失わせる制度として、相続廃除とよく混同されるものに「相続欠格」があります。この二つは、相続権を失うという結果は同じですが、そのプロセスと性質は全く異なります。
一番大きな違いは、相続廃除が被相続人の「意思」に基づいて家庭裁判所に「申し立てる」のに対し、相続欠格は特定の重大な不正行為を行った場合に、誰の意思も介さず法律上「当然に」相続権を失うという点です。
以下の表で、その違いを明確に比較してみましょう。
比較項目 | 相続廃除 | 相続欠格 |
---|---|---|
成立要件 | 被相続人等からの申立てにより 家庭裁判所の審判で確定 | 法律で定められた欠格事由に該当すれば 自動的に成立(手続き不要) |
主な事由 | 被相続人への虐待、重大な侮辱、著しい非行 | 相続に関する犯罪行為 (例:被相続人の殺害、遺言書の偽造・破棄など) |
被相続人の意思 | 必要(被相続人の意思がすべての起点) | 不要(被相続人が許しても相続権は回復しない) |
遺留分 | 失う | 失う |
取消し | 可能(被相続人の意思でいつでも取り消せる) | 不可(一度欠格となると覆らない) |
戸籍への記載 | 記載される | 記載されない |
簡単に言えば、相続欠格は「相続におけるレッドカード」。例えば、相続人が遺産目当てに被相続人を殺害したり、自分に都合の良い遺言書を無理やり書かせたりした場合は、問答無用で相続権を失います。
一方で、相続廃除は、そこまでの犯罪行為はないものの、親子関係を根底から覆すようなひどい仕打ちを受けている、という場合に検討する「イエローカードの累積による退場処分」のようなイメージですね。
親に遺産を渡したくない場合の対処法
ここまでは親が子に相続させたくないケースでしたが、「親に遺産を渡したくない場合はどうすればいいですか」という逆のご相談も少なくありません。例えば、幼少期に親から虐待を受けて育ち、事実上絶縁状態にあるような、辛いご経験をされた方からのご相談です。
この場合も、これまで説明してきた相続廃除の法的な考え方が適用されます。つまり、子供の側から、親の相続権を一方的に廃除することはできません。相続廃除の申立てができるのは、あくまで被相続人(この場合は財産を残す子供)本人だけです。
もし、ご自身の万が一の際に、疎遠になっている親に財産が渡ることを避けたいのであれば、「全財産を、お世話になった配偶者やパートナー、兄弟、あるいは特定の団体に遺贈する」といった内容の有効な終活の一環として遺言書を作成しておくことが、最も現実的で有効な対策となります。
遺言書を作成しても親には「遺留分」が残る点に注意
ただし、ここで非常に重要な注意点があります。親(法律上は直系尊属)には「遺留分」という、法律で保障された最低限の相続財産の取り分があります。
そのため、遺言書で親の相続分をゼロと指定しても、親が「遺留分侵害額請求」という権利を行使すれば、法定相続分の3分の1(相続人が親のみの場合)に相当する金銭を取り戻すことができてしまいます。
この親の遺留分まで失わせるには、やはり生前にご自身が被相続人として家庭裁判所に親の廃除を申し立て、それが認められるしか方法はありません。

基本的な考え方はご理解いただけましたか?そうなんです、相続廃除は「伝家の宝刀」のようなもので、簡単には抜けないんですね。でも、「じゃあ、うちの場合は無理なんだ…」と諦めるのはまだ早いですよ。
ここからは、実際の判例を元に、どのようなケースで認められ、どのようなケースで認められないのか、より具体的に見ていきましょう。あなたのケースと似た事例が見つかるかもしれません。
判例から見る相続廃除認められない事例

相続廃除の具体的な判例と事例
百聞は一見にしかず、ということで、ここでは実際の裁判所の判例から、どのような相続廃除事例があるのかを具体的に見ていきましょう。認められたケース(認容例)と認められなかったケース(却下例)を比較することで、裁判所がどのような事実を重視しているのかがより明確になります。
【相続廃除が認められた事例】
- 事例1:深刻な身体的虐待
推定相続人(息子)が被相続人(父)に対し、少なくとも3回にわたって暴行を加え、肋骨骨折や外傷性気胸など全治約3週間の傷害を負わせた。(大阪高裁 令和元年8月21日決定) - 事例2:経済的虐待と精神的苦痛
被相続人(養親)が10年近く入退院を繰り返しているのを知りながら、一切面倒を見なかった推定相続人(養子)が、養親から起こされた離縁訴訟を取り下げさせようと、体調が悪い養親に連日長電話をかけ、精神的に追い詰めた。(東京高裁 平成23年5月9日決定) - 事例3:財産の浪費と暴力
被相続人(父)の郵便貯金を無断で約3,582万円も引き出して使い込み、さらに父に対して繰り返し暴力をふるっていた。(和歌山家裁 平成16年11月30日審判)
【相続廃除が認められなかった事例】
- 事例4:被相続人への直接の加害行為ではない
推定相続人が勤務先の会社で5億円以上を業務上横領し服役したが、その非行は被相続人に直接向けられたものではないとして廃除は認められなかった。(東京高裁 昭和59年10月18日決定) - 事例5:双方に原因がある関係悪化
嫁姑の不和に起因する侮辱的な言動について、その責任は推定相続人のみに帰せられるべきものではないと判断された。(東京高裁 平成8年9月2日決定) - 事例6:正当な権利行使の範囲
推定相続人(妻や子)が被相続人と別居し、離婚調停を申し立てた行為は、それ自体が著しい非行や重大な侮辱にはあたらないとされた。(東京高裁 平成13年11月7日決定)
これらの事例から浮かび上がるのは、裁判所が、①行為の悪質性・継続性(一度きりではないか)、②加害行為の一方性(被相続人側にも原因はないか)、③関係修復の可能性(既に関係が完全に破綻しているか)、といった点を総合的に、そして極めて厳格に判断しているという事実です。
単にお金を無心する、時々暴言を吐く、といった程度では廃除事由として認められるのは難しいことがお分かりいただけるかと思います。
相続廃除と子供のケース

相続廃除の申立てで最も多いのが、やはり親が子供に対して行うケースです。しかし、親子という極めて密接な関係だからこそ、その判断は第三者間のトラブル以上に慎重に行われます。
裁判所は、たとえ子供に明らかな非行(暴力や浪費など)があったとしても、「その非行に至った背景に、親のこれまでの育て方や言動が影響していないか」という視点を必ずと言っていいほど考慮に入れます。
例えば、親自身が過去に不貞行為を繰り返して家庭を顧みなかったり、子供の意見を一切聞かずに支配的な態度をとり続けたりした結果として親子関係が悪化し、子供が非行に走ったような場合です。
このような状況では、裁判所は「現在の関係破綻の責任は、子供だけにあるとは断定できない」として、相続廃除の申立てを認めにくくなる傾向があります。
子供の廃除が特に認められにくいケース
- 子供の非行や反抗的な態度の根本的な原因が、被相続人(親)自身の過去の不適切な言動(不貞、暴力、育児放棄など)にあると推認される場合。
- 長年にわたり親子喧嘩が絶えなかったが、その原因が双方にあり、お互いに挑発的な言動を繰り返して関係を悪化させてきたと認められる場合。
- 子供からの金銭的な無心はあったものの、被相続人がそれを長年黙認、あるいは安易に応じ続けることで、子供の浪費癖を助長してきた側面がある場合。
親子間の問題は、愛情の裏返しであったり、長年の感情のもつれが複雑に絡み合っていたりすることが少なくありません。そのため、申立ての際には、単に子供の非行の事実を列挙するだけでなく、自身が親として誠実に関わってきたにもかかわらず、一方的に信頼を裏切られたという点を、第三者である裁判官に納得してもらえるよう、客観的な証拠をもって示す必要があります。
相続廃除と兄弟の関係性
「親の介護を私一人に押し付けて全く何もしなかった兄弟に、同じように親の財産を渡すのは納得できない」といったご相談は、非常によくあります。お気持ちは痛いほど分かりますが、ここで極めて重要な法律上のルールを押さえておく必要があります。それは、兄弟姉妹は、そもそも相続廃除の対象にならないということです。
「え、どうして?」と驚かれるかもしれませんが、理由は明快です。相続廃除という制度は、法律で最低限の取り分が保障されている「遺留分」を持つ推定相続人から、その遺留分も含めて相続権を完全に剥奪するための特別な制度だからです。そして、民法では、兄弟姉妹にはこの遺留分が認められていません。
【重要】兄弟姉妹への相続対策は「遺言書」一択!
兄弟姉妹に財産を渡したくない場合、相続廃除という面倒でハードルの高い手続きは一切必要ありません。被相続人が生前に、「特定の兄弟には財産を相続させない」あるいは「全財産を長男〇〇に相続させる」といった内容の、法的に有効な遺言書を作成しておけば、それだけで十分なのです。遺留分という権利がないため、後から「少しでも財産をよこせ」と請求される心配は一切ありません。
ですので、問題のある兄弟への最も確実で有効な対策は、相続廃除を検討することではなく、公正証書遺言など、後々のトラブルを防げる確実な方法で遺言を作成しておくことになります。
推定相続人の廃除と遺留分

推定相続人の廃除という制度を理解する上で、最も重要なキーワードが「遺留分」です。この遺留分との関係を理解することが、相続廃除の法的な本質を掴む鍵となります。
通常、被相続人は遺言によって自分の財産を誰にどのように分けるか自由に決めることができます。しかし、この自由には限界があります。配偶者、子供、親といった近しい相続人には、遺言によっても奪うことのできない「遺留分」という最低限の相続財産の取り分が法律で保障されているのです。(配偶者・子供なら法定相続分の1/2、親なら1/3)
つまり、遺言書で「長男には1円も相続させない」と書いたとしても、長男が「遺留分侵害額請求」という権利を使えば、本来もらえるはずだった相続財産の一定割合(この場合は1/2)に相当する金銭を、他の相続人から取り戻すことができてしまいます。
しかし、家庭裁判所で相続廃除の審判が確定すると、この状況は一変します。廃除された相続人は、相続人としての地位そのものを完全に失うため、その権利の一部である遺留分も当然に消滅します。
被相続人の「この相続人には、遺留分も含めて一切の財産を渡したくない」という強い意思を、法的に完全に実現できる唯一の制度が、相続廃除なのです。この非常に強力な効果を持つからこそ、裁判所はその適用に極めて厳格な審査を行うわけです。
相続廃除と代襲相続について
相続廃除を検討する際に、意外と見落とされがちで、しかし非常に重要なのが「代襲相続」との関係です。代襲相続とは、本来相続人になるはずだった子供が、相続の開始以前に亡くなっていたり、相続欠格や相続廃除によって相続権を失ったりした場合に、その子供(被相続人から見て孫)が親に代わって相続する制度です。
ここでのポイントは、この代襲相続が、相続廃除によって相続権を失った人の子供にも適用されるという点です。
【具体例で解説】
被相続人Aさんには、長男Bと次男Cがいます。Aさんは長年の非行に悩んだ末、家庭裁判所に申し立てて長男Bの相続廃除を認められました。「これでBに財産が渡ることはない」と安心したAさん。しかし、その後Aさんが亡くなった時、事態はAさんの思った通りには進まないかもしれません。
もし、廃除されたBに子供D(Aさんの孫)がいれば、DがBの相続権をそのまま引き継ぎ、Bに代わって相続人(代襲相続人)となります。その結果、Aさんの遺産は、次男Cと孫Dが2分の1ずつ相続することになります。つまり、Aさんの意思に反して、廃除した長男Bの家族に財産が渡ってしまうのです。
「B本人だけでなく、その家族にも一切財産を渡したくない」という強い意向があったとしても、孫であるD自身に祖父母であるAさんへの虐待といった直接の廃除事由がない限り、その相続権を奪うことはできません。この点は、相続廃除という制度が持つ限界の一つと言えるでしょう。
遺言による相続人廃除の方法

相続廃除は、被相続人が生前に自ら家庭裁判所に申し立てる方法が原則ですが、もう一つ、遺言によってその意思を示し、死後に手続きを託す方法もあります。生前に相続人と直接対決して関係をさらに悪化させたくない場合や、高齢で裁判手続きの負担が大きい場合に選択されることが多い方法です。
遺言による廃除の具体的な手順
- 法的に有効な遺言書を作成する:公正証書遺言など確実な方法で、「相続人である長男〇〇(生年月日)を廃除する」という明確な意思と、その理由(民法892条に定める虐待や重大な侮辱の具体的な事実)を詳細に記載します。
- 遺言執行者を指定する:遺言書の中で、自分の死後に裁判所への申立て手続きを行ってくれる「遺言執行者」を必ず指定しておきます。手続きは複雑なため、信頼できる親族だけでなく、弁護士や司法書士などの専門家を指定するのが一般的です。
- 相続の開始:被相続人が亡くなることで、遺言の効力が発生します。
- 遺言執行者が家庭裁判所へ申立て:遺言執行者が、遺言書の内容と被相続人が残した証拠に基づき、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続廃除の審判を申し立てます。
生前申立てとの最大の違いは、裁判所で廃除の必要性を主張するのが、事情を一番よく知る被相続人本人ではなく、遺言執行者になるという点です。
そのため、遺言執行者が裁判官を説得できるよう、生前のうちに虐待や侮辱の客観的な証拠(日記、録音、診断書など)をできるだけ多く収集・整理し、遺言書と共に遺言執行者に託しておくことが、この方法を成功させるために極めて重要になります。
遺言の作成方法については、法務省のウェブサイト「自筆証書遺言書保管制度」などで詳しい情報が提供されていますので、参考にすることをおすすめします。
相続廃除認められない事例についてよくあるご質問FAQ
-
相続廃除の申立てに費用はどれくらいかかりますか?
-
ご自身で手続きする場合、家庭裁判所に支払う実費は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手代(数千円程度)です。弁護士に依頼する場合は、別途着手金や成功報酬が必要となり、法律事務所によって異なりますが、数十万円からが一般的です。
-
一度した相続廃除を取り消すことはできますか?
-
はい、被相続人の意思でいつでも家庭裁判所に申し立てて取り消すことが可能です。相続人との関係が修復した場合など、被相続人が「廃除の取消し」を求めることで、相続権を回復させることができます。遺言で取り消しの意思表示をすることもできます。
-
相続廃除されたことは戸籍に載りますか?
-
はい、相続廃除の審判が確定し、市区町村役場に届出がされると、廃除された人の戸籍の身分事項欄に「推定相続人廃除」と記載されます。これにより、金融機関など第三者に対しても、その人が相続権を失ったことを公的に証明できます。
-
証拠が十分でないけれど、どうしても相続させたくない場合はどうすれば良いですか?
-
証拠が不十分な状況で相続廃除の申立てをしても、認められる可能性は低いです。その場合は、無理に申立てを進めるよりも、「全財産を他の相続人に相続させる。ただし、〇〇(相続させたくない相続人)には遺留分として〇〇円を支払うこと」といった内容の遺言書を作成しておくのが、最も現実的でトラブルの少ない対策と言えるでしょう。
相続廃除認められない事例のまとめ

- 相続廃除は被相続人の意思だけではできず家庭裁判所の審判が必要
- 理由は虐待・重大な侮辱・著しい非行の3つに限定される
- 単なる不仲や感情的な対立では認められない
- 客観的で継続的な行為を証明する証拠が不可欠
- 認容率は2割前後と非常にハードルが高い
- 相続権を根本から奪うため裁判所は慎重に判断する
- 相続欠格は犯罪行為などで自動的に相続権を失う制度
- 兄弟姉妹には遺留分がなく相続廃除の対象外
- 兄弟姉妹への対策は遺言書が最も有効
- 相続廃除の最大の効果は遺留分も失わせること
- 廃除されてもその子供は代襲相続できる
- 遺言で廃除の意思を示し遺言執行者に手続きを託すことも可能
- 遺言で行う場合も生前の証拠収集が重要
- 相続廃除は取り消すことも可能
- 認められない事例を学び現実的な対策を検討することが大切

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
相続廃除の厳しさと、その法的な意味合いをご理解いただけたでしょうか。感情的に「許せない」というお気持ちは、痛いほど分かります。
だからこそ、その想いを法的な形で実現するためには、冷静な準備と戦略が必要です。
もしご自身のケースでどうすべきか迷ったら、一人で抱え込まず、ぜひ私たちのような専門家にご相談ください。
あなたの状況に合わせた最善の道筋を、一緒に考えさせていただきます。
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大阪不動産・FPサービス株式会社 代表
15年以上にわたり1,500組を超えるご家族の相続や不動産のお悩みに、専門家として寄り添ってまいりました。私の信条は、法律や数字の話をする前に、まずお客様ご家族の歴史や言葉にならない想いを丁寧に「聞く」こと。信頼できる各分野の専門家チームと共に、皆様が心から安心できる最善の道筋をオーダーメイドでご提案します。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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