「相続」と聞くと、何から手をつけていいか分からなくなってしまいますよね。特にたくさんの書類を集めたり作ったりするのは、本当に大変です。私も最初は「相続関係説明図?法定相続情報一覧図?一体何が違うの?」というレベルでした。
法定相続人の順位はどこまでなのか、法定相続一覧図はどこで入手できますか?など、疑問は尽きません。
この法定相続情報一覧図は誰でも取れるものなのか、法務局には何を持っていけばいいのか…。
相続で揉める家族の特徴なんて話を聞くと、ますます不安になってしまいますよね。
そこでこの記事では、法定相続情報一覧図の取得方法や必要書類について、法務局の相続関係説明図ダウンロード情報や便利な相続関係図のテンプレートを使いながら、法定相続情報一覧図を自分で作成する方法をわかりやすく解説します。
中には法定相続情報一覧図が使えないケースもあるので、その注意点もしっかり押さえて、スムーズな相続手続きを目指しましょう!
この記事のポイント
- 法定相続人関係図の役割と基本ルールがわかる
- 自分で作成するための具体的な手順がわかる
- 法務局への申請に必要な書類がわかる
- 相続手続きをスムーズに進めるコツがわかる

相続手続きは、多くの方にとって初めての経験で、戸惑うことばかりだと思います。特に「法定相続情報一覧図」は、戸籍謄本一式の代わりになる便利な書類ですが、作成には戸籍の正確な読み取りが必要です。
この記事で基本をしっかり押さえて、相続サポートの第一歩を安心して踏み出してくださいね。
法定相続人関係図の基本をわかりやすく解説

法定相続人の順位はどこまで決まっている?
相続が始まると、「誰が相続人になるの?」という点が最初の大きなポイントになります。これは「誰かの気持ち」で決まるわけではなく、民法という法律ではっきりとルールが決められています。これを「法定相続人」と呼び、遺産を受け継ぐ権利を持つ人には優先順位が定められているのですよ。
まず、亡くなった方(被相続人)に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。これは大前提のルールです。
その上で、配偶者以外の親族には、以下の通りの順位が付けられています。
順位 | 対象となる人 | 配偶者と共に相続する場合の法定相続分 |
---|---|---|
第1順位 | 子(子が既に亡くなっている場合は孫などの直系卑属) | 配偶者:1/2、子:1/2 |
第2順位 | 直系尊属(父母、祖父母など) | 配偶者:2/3、直系尊属:1/3 |
第3順位 | 兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪) | 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4 |
ポイント
この順位がとても重要で、第1順位の人が一人でもいる場合は、第2順位や第3順位の人は相続人にはなれません。例えば、亡くなった方に子どもがいれば、たとえご両親がご健在でも、相続人は配偶者と子どもだけ、ということになります。もし子どもがいない場合に、初めてご両親(第2順位)に権利が移る、という仕組みです。
この関係性を正確に把握することが、相続手続きのスタートラインになります。
法定相続情報一覧図を自分で作成するには

「法定相続情報一覧図」と聞くと、何だか専門家でないと作れないような難しいイメージがあるかもしれませんね。でも、ご安心ください。この書類は、司法書士などの専門家に依頼しなくても、自分で作成することが可能です。
作成方法は、大きく分けて2つあります。
- 手書きで作成する方法
- パソコン(ExcelやWordなど)で作成する方法
手書きの場合は、A4の白い紙にボールペンなど消えない筆記具を使って、決められたルール通りに記載していきます。一方、パソコンで作成する場合は、法務局のホームページで提供されているテンプレート(様式)を利用するのが一番簡単で確実です。
どちらの方法でも有効な書類を作成できますが、パソコンで作成する方が、書き損じの修正が簡単だったり、見た目もきれいに整ったりするのでおすすめですよ。必要な情報さえ正確に集められれば、作成作業自体はそれほど難しいものではありません。
相続関係図の便利なテンプレートを紹介
法定相続情報一覧図を自分で作ってみよう!と思ったときに、一番の味方になってくれるのが「テンプレート(様式)」の存在です。これを活用することで、作成の手間を大幅に減らし、記載漏れなどのミスを防ぐことにも繋がります。
最も信頼性が高く、おすすめなのは、やはり法務局の公式サイトで配布されているものです。ここには、さまざまな家族構成を想定したExcel形式のテンプレートが用意されています。
主なテンプレートの例
- 法定相続人が配偶者と子である場合
- 法定相続人が子のみである場合
- 法定相続人が配偶者と親である場合
- 法定相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合
- 代襲相続が生じている場合
ご自身の相続の状況に最も近いテンプレートを選んでダウンロードし、パソコンで情報を入力していくだけで、規格に合った一覧図の骨格が完成します。一から図を作成する必要がないので、とても効率的ですね。
法務局の相続関係説明図はダウンロード可能

前述の通り、法定相続情報一覧図を作成するための様式(テンプレート)は、法務局のホームページから誰でも無料でダウンロードできます。
「法定相続情報証明制度」の案内ページ内に、「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」というコーナーがあり、そこからExcelファイルをダウンロードする流れになります。
記載例もPDF形式で一緒に提供されているので、「この欄には何を書けばいいの?」と迷ったときには、記載例を見ながら作業を進めることができるので安心です。自分で作成する場合は、まずこの公式サイトを確認し、ご自身のケースに合った様式をダウンロードすることから始めましょう。
法定相続情報一覧図の取得方法とは
自分で一覧図を作成したら、次はそれを法務局に提出して「認証文付きの写し」としてもらう手続きに進みます。この写しを受け取るまでの一連の流れが「取得方法」となります。
大まかなステップは以下の通りです。
法定相続情報一覧図の取得までの5ステップ
- 必要書類を集める
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本など、必要な書類を市区町村役場などで取得します。 - 法定相続情報一覧図を作成する
集めた戸籍謄本を基に、相続関係をまとめた一覧図を作成します。 - 申出書を記入する
法務局に提出するための「申出書」を作成します。これも様式がダウンロードできます。 - 法務局(登記所)へ申し出る
作成した一覧図、集めた必要書類、申出書をセットにして、管轄の法務局へ提出します。郵送での提出も可能です。 - 認証文付きの写しを受け取る
法務局の登記官が内容を確認し、問題がなければ認証文が付いた写しが交付されます。手数料は無料です。
特に最初の「必要書類を集める」部分が、一番時間がかかり大変な作業かもしれません。亡くなった方の本籍地が何度も変わっていると、その都度、過去の市区町村役場に請求する必要が出てきます。
法定相続人関係図の申請と注意すべき点

法定相続情報一覧図の必要書類まとめ
法定相続情報一覧図の申し出をする際には、作成した一覧図のほかに、その内容が正しいことを証明するための公的な書類を一緒に提出する必要があります。主に必要となるのは以下の書類です。
書類の種類 | 取得場所 | 注意点など |
---|---|---|
①被相続人(亡くなった方)の戸除籍謄本 | 市区町村役場 | 出生から死亡までの連続したものが必要です。 |
②被相続人(亡くなった方)の住民票の除票 | 市区町村役場 | 本籍地の記載があるものを用意します。 |
③相続人全員の戸籍謄本または抄本 | 市区町村役場 | 被相続人の死亡日以降に発行されたものが必要です。 |
④申出人(手続きをする人)の氏名・住所を確認できる公的書類 | - | 運転免許証のコピー、マイナンバーカードのコピー、住民票の写しなど。 |
⑤(任意)各相続人の住民票の写し | 市区町村役場 | 一覧図に相続人の住所を記載したい場合に必要となります。 |
特に①の「出生から死亡までの戸籍謄本」は、被相続人が転籍を繰り返している場合、複数の役所から取り寄せる必要があり、全ての書類が揃うまでに1ヶ月以上かかることも珍しくありません。早めに準備を始めることが、手続きをスムーズに進めるカギとなります。
法定相続情報一覧図は法務局で入手できる

法定相続情報一覧図そのものは自分で作成しますが、法的な証明力を持つ「認証文付きの写し」は、法務局(登記所)で手続きをして入手します。
申出をする法務局は、どこでも良いわけではなく、以下のいずれかの場所を管轄する法務局を選ぶことができます。
- 被相続人(亡くなった方)の本籍地
- 被相続人(亡くなった方)の最後の住所地
- 申出人(手続きをする相続人)の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
ご自身の都合の良い場所を選んで申し出ることができるので、便利ですね。例えば、ご自身の家の近くの法務局で手続きを済ませることも可能です。手続きが完了すると、登記官が内容を証明した「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。この写しは、手数料無料で、必要な枚数を請求できるのも大きなメリットです。
法定相続情報一覧図は誰でも取れるのか?
「こんなに便利な書類なら、誰でも取得できるの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。プライバシーに関わる重要な情報なので、申出ができる人(申出人)は限定されています。
申出人になれるのは、原則として「被相続人の相続人」です。つまり、法律に基づいて遺産を相続する権利を持つ人のみが、この手続きを行うことができます。
代理人による申出も可能
もちろん、相続人本人が忙しかったり、手続きが難しかったりする場合には、代理人に依頼することもできます。代理人になれるのは、以下のような方々です。
- 法定代理人(親権者や成年後見人など)
- 民法上の親族
- 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士
親族や専門家に依頼する場合は、相続人が作成した「委任状」が必要になります。友人や知人など、上記に当てはまらない第三者は代理人にはなれないので注意が必要ですね。
法定相続情報一覧図が使えない場合

法定相続情報一覧図の写しは、戸籍謄本の束の代わりとして、相続登記や銀行預金の解約、相続税の申告など、さまざまな相続手続きで利用でき、非常に便利です。しかし、残念ながら万能ではなく、一部の手続きでは使えないケースや注意が必要な場合があります。
注意!法定相続情報一覧図が使えない・使いにくいケース
- 一部の金融機関の独自ルール
ごく稀に、金融機関が独自のルールを設けており、一覧図の写しではなく、戸籍謄本そのものの提出を求められることがあります。手続きの前に、提出先の金融機関に確認しておくと安心です。 - 一覧図の記載方法による制限
相続税の申告手続きでは、一覧図に記載する続柄を「子」と簡略化して記載した場合、利用できないことがあります。税務署への提出を考えている場合は、戸籍に記載されている通り「長男」「二女」などと正確に記載する必要があります。 - 発行から長期間が経過した場合
制度として有効期限はありませんが、提出先によっては「発行後3ヶ月以内」など、独自の期限を設けている場合があります。
せっかく準備したのに使えなかった…!なんてことにならないように、提出先に事前に確認しておくのが確実な方法といえます。

一覧図はとても便利ですが、「住所」を記載するかどうかは重要なポイントです。
不動産の相続登記などでは、一覧図に住所が記載されていれば住民票の提出を省略できます。
手間を減らすためにも、申出の際に相続人全員の住民票を添付して、一覧図に住所を記載してもらうことを強くおすすめします。
相続で揉める家族の特徴と対策
相続手続きそのものも大変ですが、それ以上に心を悩ませるのが、家族や親族間でのトラブルですよね。「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていても、お金が絡むと関係が変わってしまうことも…。
そうならないために、相続で揉めやすい家族の特徴と、その対策を知っておくことはとても大切です。
揉めやすい家族の主な特徴
- コミュニケーションが不足している:普段から家族間の対話が少なく、誰が何を考えているか分からない。
- 遺言書がない:亡くなった方の意思が不明確なため、相続人それぞれの「想い」や「言い分」がぶつかり合う。
- 相続財産が不動産のみなど分けにくい:「実家を誰が継ぐか」などで意見が対立しやすい。
- 特定の相続人に介護などの負担が偏っていた:「私はこれだけ貢献したのに…」という不公平感がトラブルの火種に。
- 相続人の中に連絡が取りにくい人がいる:遺産分割協議が進まず、不満が募る。
トラブルを防ぐための対策
一番の対策は、亡くなる方(被相続人)が元気なうちに、家族で相続について話し合っておくことです。そして、その内容を法的に有効な「遺言書」として残しておくことが、最も強力なトラブル防止策になります。遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになるため、相続人同士が争う余地が少なくなります。
法定相続人関係図についてよくあるご質問FAQ

-
法定相続情報一覧図の作成や交付に費用はかかりますか?
-
法務局での一覧図の作成(確認・認証)や、写しの交付に手数料は一切かかりません。無料です。ただし、申し出の際に添付する必要がある戸籍謄本や住民票などを市区町村役場で取得するための手数料は、ご自身で負担する必要があります。
-
申出をしてから、写しがもらえるまでどのくらい時間がかかりますか?
-
提出先の法務局の混雑状況にもよりますが、一般的には申出から1週間~2週間程度で交付されることが多いようです。ただし、書類に不備があった場合は、補正(修正)のためにさらに時間がかかることがあります。
一番時間がかかるのは戸籍謄本などを集める段階なので、全体としては1ヶ月~2ヶ月ほど見ておくと安心です。
-
作成した一覧図の内容を間違えてしまったらどうなりますか?
-
法務局に提出した後、登記官が内容をチェックする過程で間違いが見つかった場合は、電話などで連絡があり、補正(修正)を求められます。
軽微なものであれば電話での確認で済むこともありますが、基本的には修正したものを再提出することになります。そのため、提出前によく確認することが大切です。
-
法定相続情報一覧図の写しに有効期限はありますか?
-
この制度自体には、有効期限の定めはありません。
しかし、提出先の金融機関や行政機関によっては、「発行後3ヶ月以内」や「発行後6ヶ月以内」といった独自のルールを設けている場合があります。
複数の手続きで利用する場合は、まとめて行うか、都度提出先に確認することをおすすめします。

相続手続きは精神的にも時間的にも負担が大きいものです。特に戸籍集めは骨が折れる作業。だからこそ、一度の提出で公的な証明書が何通も無料で手に入るこの制度は、相続人の強い味方です。
令和6年4月からは相続登記も義務化されました。この制度を上手に活用して、賢く手続きを進めてくださいね。困ったときは専門家へのお問い合わせも検討しましょう。
失敗しない法定相続人関係図のポイント
- 法定相続人関係図は相続手続きを簡略化する便利な制度
- 相続人の順位は民法で定められている
- 第一順位は子、第二は親、第三は兄弟姉妹
- 自分で作成することも可能
- 法務局のウェブサイトからテンプレートをダウンロードできる
- 作成には被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要
- 相続人全員の戸籍謄本も準備する
- 申出は管轄の法務局で行う
- 手数料は無料で何通でも交付してもらえる
- 申出ができるのは相続人またはその代理人
- 一部の金融機関や手続きでは使えない場合もあるので注意
- 相続トラブルを防ぐには生前のコミュニケーションが大切
- 作成で不明な点があれば専門家に相談するのも一つの手
- 令和6年4月から相続登記が義務化されたため重要性が増している
- 法定相続情報番号を使えば登記申請書への証明書の添付を省略できる
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大阪不動産・FPサービス株式会社 代表
15年以上にわたり1,500組を超えるご家族の相続や不動産のお悩みに、専門家として寄り添ってまいりました。私の信条は、法律や数字の話をする前に、まずお客様ご家族の歴史や言葉にならない想いを丁寧に「聞く」こと。信頼できる各分野の専門家チームと共に、皆様が心から安心できる最善の道筋をオーダーメイドでご提案します。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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