不動産エージェントの堀川八重(ほりかわやえ)です。
相続不動産を売却する場合、税金がかかることは知っていますか?売却前の準備や売却時の税金、節税方法について解説します。今日は相続不動産の売却に関する税金について詳しくお話しします。
相続不動産売却の前に必要な手続き
相続不動産の売却には手続きが必要であり、これが完了していないと売却が制限される可能性があります。ここでは、相続不動産を売却する前に必要な手続きについて説明します。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続財産の分配方法を相続人全員で話し合うことです。法定相続分や遺言書で財産を分ける場合は不要ですが、相続人が協議して財産を分割する場合には、協議がなければ登記で所有者を変更することはできません。全ての相続人が協議に参加する必要はありませんが、協議結果を文書化し遺産分割協議書を作成する必要があります。協議書には不動産の詳細(建物・土地など)を正確に登記簿謄本の通りに記載し、全ての相続人の署名と捺印が必要です。
相続登記
相続者が被相続人の不動産を引き継ぐ場合、売却前に相続登記を行い名義変更が必要です。相続登記は法務局で手続きされます。相続登記には以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本(生誕から死亡まで)
- 被相続人の住民票の除票
- 全相続人の戸籍謄本
- 相続人となった者の住民票
- 遺産分割協議書
- 全相続人の印鑑証明書
- 登記対象不動産の固定資産評価証明書
- 登記対象不動産の登記簿謄本
不動産売却のための必要書類を準備する
相続不動産を売却する場合、以下の書類を準備します。これらの書類を事前に整えておくと、不動産業者との売却手続きがスムーズに進みます。
・権利証または登記識別情報:権利証(登録済権利証)や登記識別情報(英数字の12桁の組み合わせ)が必要です(平成18年以前に購入した不動産の場合)。
・売買契約書
・土地測量図
・境界確認書
・重要事項説明書
・印鑑証明書と実印
・住民票のコピー
・本人確認書類(免許証など)
・設備の仕様書と物件の図面
・固定資産税納税通知書
・固定資産税評価証明書
・建築確認済証
・工事記録書と建築設計図面
・耐震診断報告書
・アスベスト使用調査報告書
・マンション管理規約や使用細則(マンションの場合)
相続不動産売却時にかかる税金
相続不動産を売却する際には、以下のような税金が課されます。
不動産にかかる税金
個人の不動産には、以下のような税金が関係します。
・購入時:不動産取得税 ・所有時:都市計画税・固定資産税 ・売却時:所得税・住民税 ・相続時:相続税 ・売買時:印紙税・登録免許税
不動産取得税や都市計画税・固定資産税は不動産に特有の税金ですし、相続税も相続時の特別な税金です。ただし、売却時の所得税・住民税だけは通常の税金であり、特別なものではありません。不動産売却に特別な税金は存在せず、基本的には年々納めている所得税・住民税の一部となります。
所得税と住民税の計算方法について
相続不動産を売却する場合も、一般的な不動産の売却と同様に所得税と住民税が課税されます。所得税と住民税を支払うためには、まず所得を確定させる必要があります。所得は確定申告によって計算されますが、全ての収入を合算した総所得を確定する前に、売却による課税譲渡所得を計算する必要があります。
課税譲渡所得とは、売却価格から取得費用と売却費用を差し引いた金額です。取得費用は、売却する建物や土地の購入価格、不動産取得税、仲介手数料などを総合的に考慮します。建物の場合は減価償却後の価格が使用されます。ただし、相続によって不動産を取得した場合、古い時期の取得で売買契約書などが存在しないため、取得費用が明確でない場合があります。そのような場合には、譲渡価格の5%を概算の取得費用として使用します。
居住用財産の相続には、3,000万円の特別控除が適用されます。
被相続人の自宅を売却する場合、相続による特例があります。この特例により、課税譲渡所得から3,000万円の特別控除が適用されます。課税譲渡所得は、譲渡価額から譲渡費用、取得費、特別控除の3,000万円を差し引いて計算されます。ただし、特別控除を適用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
・昭和56年5月31日以前に建てられたマンション以外の住宅であること ・売却時に地震に対する安全性の規則に適合していること
なお、建物の場合は更地にして売却する場合でも特例が適用されることになります。
所得税は、不動産を持っている期間によって異なる要件があります。
不動産の売却に関して、所得税は所有期間によって異なる税率が適用されます。一般的に、相続財産の所有期間は10年以上となることが多いです。居住用財産を10年以上所有し、それを売却した場合の税率は以下の通りです。
・特別控除の3,000万円を差し引いた譲渡所得のうち、6,000万円以下については所得税率10%、住民税率4%
・特別控除の3,000万円を差し引いた譲渡所得のうち、6,000万円を超える部分については所得税率15%、住民税率5%
また、所得税額には復興特別所得税として2.1%が別途課税されます。
相続不動産売却の税金を節税する方法
譲渡所得課税は、不動産の売却によって得られる利益に対して課税されます。具体的には、売却価格から購入時の価格や仲介手数料などの取得費を差し引いた差額が課税対象となります。この課税額は、取得費と譲渡費用の合計額と売却価格の差が大きいほど増えます。
例えば、古い実家を良い立地で高値で売却する場合や、購入時の価格が明確でなく取得費が売却価格の5%となる場合などは、高い税額が発生する可能性があります。このような場合、節税のためには適用可能な特例を把握しておくことが重要です。
節税対策には、長期保有による特例や損失の確定申告、控除や特別控除の活用などがあります。個別の状況に応じて最適な節税方法を検討し、税金の負担を軽減することが求められます。税理士や税務専門家のアドバイスを受けながら、適切な節税戦略を立てましょう。
取得費加算の特例
持っている期間が長いほど、譲渡所得課税の税率は低くなる傾向があります。ただし、相続税を申告してから3年以内に不動産を売却すると、税金負担は軽減される可能性があります。これは、売却価格から譲渡費用や取得費用の他に、売却する建物や土地の相続税額を差し引くことができるため、課税される譲渡所得が減少するからです。このように相続税を利用することで、所得税を節税することができます。ただし、具体的な節税効果は個別の状況によって異なるため、税務の専門家に相談することが重要です。
3000万円の特別控除
3000万円の特別控除は、自宅の売却時の利益である譲渡所得のうち、3000万円までが免除される制度です。つまり、3000万円以下の譲渡所得には実質的に所得税が課税されません。この特例は、以前は住んでいる建物や土地に限定されていましたが、相続した実家で生活していなくても2019年12月31日までは特例が適用されます。ただし、特例の適用条件を満たす必要がありますので、詳細については税理士や税務署などの専門家に相談することをおすすめします。また、取得費加算の特例と3000万円の特別控除は併用することができないため、注意が必要です。
参考
・エンディングノートどこで買える?購入ガイド
・免許返納誕生日までの高齢者向けガイド
・一人っ子時代の家族信託活用法とその重要性
・任意後見制度の魅力と利用者が少ない理由
・成年後見制度を利用しない方法5つのステップ
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