大阪不動産・FPサービス 一般社団法人終活協議会公認 終活ガイド1級・心託コンシェルジュの堀川八重(ほりかわ やえ)です。
高齢化が進行している現在では、「もし自分が認知症になったら……」と不安に感じている方も多いでしょう。
特に財産の管理に関しては、トラブルの原因になる可能性もあるためきちんとしておきたいものですよね。
認知症の人の財産管理方法としては成年後見制度が有名ですが、利便性に問題を感じている方も少なくありません。
そこで注目を集めているのが、財産管理手法のひとつである「家族信託」です。
この記事では、家族信託について、メリット・デメリットややり方などを解説します。
財産管理について心配がある方は、ご参考にしていただければ幸いです。
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家族信託とは
家族信託とは、財産管理手法のひとつです。
財産に対する権限のうち、財産を管理運用処分する権限を親族に渡すことを指します。
家族信託では以下の用語が多用されるため、混同しないように整理しておくべきです。
【家族信託で多用される用語】
・委託者……自分の財産を信託する人
・受託者……信託財産の名義を受け持ち、管理運用処分できる権利を持つ人
・受益者……信託財産の財産権を持つ人
家族信託のメリット
ここでは、家族信託の利点を解説します。
メリット①委託者の判断能力を問わず財産管理ができる
この手法を利用することで、委託者の判断能力を問わず財産管理が可能です。
財産保有者が認知症を患った場合、契約する能力がないとみなされてさまざまな契約ができなくなります。
たとえば家を売りたいと思っても、判断能力がない人では意思を明確に伝えることができないのです。
こうした場合には、成年後見制度があります。
しかし親族が後見人に選ばれないことも多く、財産の管理運用処分権が制限されることがあって、利用しづらい局面が多いのです。
そしてそうした局面でも、委託者の判断能力を問わず親族が代わりに財産管理できる制度として、家族信託が広まっています。
メリット②委託者の意思通りに財産承継・事業継承ができる
この手法には、遺言効果が期待できます。
遺言効果とは、財産権の後継者を決めておくことで、遺言を残すことと法律上同様の効果が得られることです。
さらに、後継者は2番目だけでなくその次以降も決めることができます。
これは遺言にはできない、家族信託ならではの効果です。
メリット③成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができる
財産管理においては、家族信託の方が成年後見制度よりも柔軟性が高いです。
成年後見制度では、家庭裁判所が選任した成年後見人が、判断能力の低くなった人の財産管理を行います。
この制度では、本人の得になることしかできません。
たとえば相続税負担へ備えは本人の得になるとはいえず、成年後見人ができない行為です。
家族信託は本人の意思に基づいて財産管理ができるため、相続税負担を重くしないための準備も行えます。
また、成年後見人には弁護士をはじめとする専門家が選ばれることも多く、家族信託の方がフレキシブルなのです。
メリット④配偶者の認知症にも備えられる
配偶者の認知症への備えにも、この手法が活用できます。
被相続人が遺言書を各時点で既に配偶者の判断能力が無くなっていた場合、自分が死んだ後の配偶者のことが心配になるものです。
配偶者に遺産を相続することができますが、判断能力がないために諸々の契約が行えない恐れがあるからです。
その場合、家族信託で自分の死後は受益者を配偶者にしておきます。
こうすることで、遺言や遺産分割協議書不要のまま配偶者の財産を生活のために利用してもらうことが可能になります。
メリット⑤倒産隔離機能を有する
この手法には、「倒産隔離機能」があります。
これは委託者や受益者が将来、信託財産とは無関係な負債を抱えた際にも、信託財産は差し押さえを受けない機能のことです。
子供を受託者として、財産を信託した場合を考えてみましょう。
この場合、子供が将来破産をしたとしても、信託した資産は個人資産と別にされるため、差し押さえされません。
メリット⑥受託者への報酬が不要
原則として家族間で実施するため、第三者機関を受託者とした際に発生するコストが発生しません。
ただし、家族間とはいっても受託者に報酬を払うこと自体は、もちろん可能です。
メリット⑦メリット遺留分減殺請求の対象にならない可能性がある
この手法を利用して遺産の継承先を決めた場合、遺留分減殺請求の対象にならない可能性があります。
遺言によって、特定の人に遺産が渡らないように残すことは可能です。
しかし配偶者や子供などの場合は遺留分があり、主張されることで一定割合が取り返されるのです。
家族信託によっては遺留分減殺請求の対象外となるか否かは確定的にいえませんが、状況次第では試してみる価値もあるでしょう。
家族信託とは?のデメリット
ここでは、家族信託を利用する際に知っておきたい注意点について解説します。
デメリット①財産管理を誰もやりたがらない恐れがある
財産管理を誰もやりたがらない可能性があることは、まず理解しておく必要があるでしょう。
財産の管理には、大きな責任が伴うことも多いためです。
たとえば受託者として不動産を管理するといった場合は、ときに大きな負担となることもあります。
老朽化した建物のせいで誰かに怪我をさせてしまった場合は、損害賠償責任を負う可能性もあるでしょう。
また、固定資産税の納税管理も、受託者が行う必要があります。
こうした責任を負うリスクから、受託者になるのを避ける方も少なくありません。
デメリット②親族間の争いにつながる恐れがある
親族間の争いにつながる可能性も十分に考えられます。
たとえば子供が複数人いてそのなかの1人を受託者にした場合、ほかの子供が不満を持つことは考えられます。
受託者は信託財産の管理権を持つため、財産が生み出す収支の管理が不透明になれば、家族間で疑いが発生する恐れがあるのです。
親族間の争いを避けるためには、事前に話し合いをして合意を取り付けておくことが重要です。
デメリット③成年後見制度における身上監護機能がない
家族信託には、成年後見制度の身上監護機能がありません。
身上監護とは、病院への入所や入院手続きなどを指します。
家族信託はあくまでも財産管理権に関する法律上の手法であるため、受託者に身上管理権は発生しません。
デメリット④遺言が不要というわけではない
家族信託を利用しても、遺言が不要にはなりません。
家族信託契約書に明記がない財産に関しては、遺言書を作成して継承先を決めておくことが必要です。
決めないままでは遺産分割協議が必要となり、被相続人の意思が相続に反映されないので注意しましょう。
デメリット⑤節税効果は期待できない
家族信託には、節税効果はありません。
委託者には税金がかかりませんが受益者には課税されるため、注意が必要です。
たとえば、受益者が第三者である場合、受益権が相続人に移転した段階で相続税がかかります。
もし節税が大きな目的であれば、ほかの手段を探った方が良いでしょう。
デメリット⑥遺留分侵害額請求の対象になる恐れがある
家族信託で取り決めた財産分与が遺留分を侵害する場合は、遺留分侵害請求の対象になる可能性が
あります。
現時点ではまだ対象になるか否か、専門家の間でも意見が分かれている状態です。
家族信託とは?かかる費用は?
家族信託を行うには、主に以下の費用がかかります。
【主な費用】
- ・公正証書作成費用
- ・登記関連費用
- ・専門家への報酬
公正証書作成費用は、資産額5,000万円以下の資産で3万円程度、5,000万円超の資産で5万円程度が目安です。
ただし公正証書は作る必要がなく、作成しない場合は当然費用の負担もありません。
不動産の登記においては、以下の金額がかかります。
【不動産投機の費用】
- ・土地の場合……評価額の0.3%
- ・建物の場合……評価額の0.4%
専門家依頼時の費用は、依頼先によって異なります。
家族信託は専門性が高い手段であるため、弁護士や司法書士などの専門家への依頼が事実上前提となるでしょう。
家族信託の手続きとは
ここでは、家族信託の手続きについて、やり方を順番に解説します。
やり方①目的を決める
手続きを進めるにあたってはまず、実施の目的をはっきりとさせることが重要です。
目的はあいまいなまま手続きを進めていけば、契約内容に不足や誤りが発生する恐れがあるためです。
「自分が亡くなった後、認知症の妻に後見人を付けたくない」「所有財産の窓口をひとつにしたい」などが目的に挙げられます。
やり方②内容を決める
次に、目的を果たすために必要な内容を決めます。
主に、以下のような項目を決定することが必要です。
【決定すべき項目】
・信託の目的
・委託者
・受託者(第二受託者)
・受任者(第二受益者)
・信託する財産
・委託者の地位権利
・信託の内容
・受託者の権限と義務
・信託の終了事由
・残余財産の帰属先
やり方③内容を書面にする
内容を決めたら、それを信託契約書に落とし込んでいきます。
作成時には、条文構成と文章の簡潔さに気を付けることが重要です。
必要な条文が入っていなければ目的を果たせず、内容がわかりづらければ争いの元になるためです。
やり方④信託契約書を公正証書にする
信託契約書を作成したら、公証役場にて公正証書にします。
公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する文書です。
公証人は、裁判官や検察官を長年務めた経験豊富なベテラン法律家です。
そのため公証人が作成した書類ということで、公正証書には高い証明力があります。
公証人が作成した文書は表記間違いがなく、万一紛失しても再発行してもらえます。
そのほかにも信用力の高さから信託銀行で口座開設がしやすいといったメリットは多数あります。
必須ではありませんが、作成しておくのがおすすめでしょう。
やり方⑤不動産名義を変更する
不動産信託の場合は、委託者から受託者に所有者名義を変更します。
この作業を登記申請と呼び、登記申請は当該不動産が存在する場所の管轄法務局で実施します。
法務局の管轄は、法務省のホームーページで確認可能です。
やり方⑥管理専用口座を作り送金する
受託者が信託財産を管理するために、通常は専用口座を作成します。
受託者は、自分の固有財産と信託された財産とを明確に分別する義務があるためです。
大手の信託銀行に依頼することで、「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」と呼ばれる口座を作れます。
信託口口座であれば、仮に受託者が亡くなったとしても、あらかじめ決めておいた第二受託者に引き継がれるため便利です。
しかし信託口口座を必ず作る必要はなく、通常の口座を管理専用にすることで問題ありません。
もし通常の口座で管理するのであれば、信託契約書に以下のような文言を入れることが重要です。
「「〇〇銀行 口座番号〇〇〇〇 名義人〇〇〇〇を信託専用口座とします」
口座を解説したら、遅滞なく委託者の名前で送金することが大切です。
そのままにしておいて万が一委託者に判断能力が無くなってしまえば、そもそも家族信託した意味が無くなってしまいます。
家族信託とはまとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事を読んでいただいたことで、家族信託の概要やメリット・デメリット、手続きの大まかなやり方などについてご理解いただけたのではないでしょうか。
家族信託は家族間で行う財産管理方法のひとつであり、後見制度に代わって柔軟な財産管理を実現できます。
参考
・家族信託手続きで知るべき3つのポイント
・家族信託後見人違い解説:4大メリットを知る
・家族信託費用自分で節約、5つの効果的方法
・家族信託手数料の相場を知る7つのコツ
・30代から始める終活エンディングノートのススメ
・エンディングノート何歳から書くべき?3つのポイント
・家族信託委託者死亡時の全手続きガイド5選
・家族信託後見人違い解説:4大メリットを知る
・家族信託認知症発症後の管理を効率化する4ステップ
・老後一人ぼっち女性のための10の生活計画
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投稿者プロフィール
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終活や相続、不動産、生命保険に寄り添う専門のコンサルタントです。相続診断士、ファイナンシャルプランナー、終活ガイド、エンディングノート認定講師など、20種類以上の資格を持ち、幅広いサポートが可能です。
家族でも話しにくいテーマを、一緒に解決してきた実績があります。『勘定(お金)』と『感情(気持ち)』とのバランスを取ることで、終活・相続をスムーズに進めます。さらに、不動産を『負動産』にせず『富動産』にする方法もお伝えします!
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